良性結節のTSH抑制療法の目的は?

回答者・杉谷 巌
日本医科大学付属病院内分泌外科准教授
発行:2014年4月
更新:2014年7月

  

他の疾患の検査中、偶然、結節性病変(甲状腺結節)が見つかり、様子を見るといわれていますが、がん化の心配はないのか不安です。結節性病変に対してTSH(甲状腺刺激ホルモン)抑制治療があるとか――。どんな治療でどれくらいの期間受ければ良いのですか? 副作用は?

(42歳 女性 福岡県)

がん化の心配はなし 治療目的は腫瘍の縮小

日本医科大学付属病院内分泌外科准教授の杉谷 巌さん

まず心配していらっしゃる甲状腺の良性腫瘍のがん化は、ほとんどありません。お調べになった通り、確かに良性腫瘍に対するTSH抑制治療はありますが、がん化を防ぐために行うのではなく、腫瘍を縮小させる目的の治療です。

良性腫瘍の中には、どんどん大きくなっていくものがあって、放っておくと周囲の臓器を圧迫して悪影響を与える場合があり、こういったケースでTSH抑制治療を考慮することがあります。具体的には甲状腺ホルモン薬を多めに服用し、腫瘍を増殖させる働きのあるTSHの分泌を抑制する療法です。

ただ、この治療法の実施については専門家の間でも意見が分かれるところです。全般的には「一時的には縮小できても長期的には効かない」とする見解が多いようです。多くの場合、効果は数カ月から1年ぐらいです。とくに日本人のように普段の食事で十分にヨードを摂取できている場合、TSH抑制治療の効果は弱いと思います。ヨード欠乏が原因の結節が日本では少ないからです。

TSH抑制療法では、不整脈など心臓への負担を増す副作用に注意しなければなりません。特に閉経後の女性だと骨粗鬆症の進行というリスクもあります。

このような観点から、この療法を受けられることは、あまりお勧めできない、というのが私の意見です。経過観察をしていて腫瘍が大きくなり圧迫感などが出る場合、手術を検討するということでよいと思います。

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