濾胞がんの鑑別は細胞診でも難しいのか?
濾胞がんの疑いがあるが、良性の腺腫かもしれない、と言われました。細胞診でもわからないことがあるのですか? 杉谷先生は「経験的に濾胞がんが疑わしい場合は手術を勧めますし、そうでない場合には経過を見ることが多い」と言われていますが、どんな所見があれば疑わしいと判断されるのですか?
(59歳 男性 山梨県)
A 被膜の状態や 血流の様子など
甲状腺がんの多くは超音波検査、あるいは穿刺吸引細胞診を用いて診断が可能です。しかし、全甲状腺がんの5%程度の頻度を占める濾胞がんの診断は容易ではなく、しかも稀に悪性度が高いものもあり、手術適応の判断に困ることがよくあります。
良性腫瘍である腺腫と濾胞がんの区別は、手術で取り出した腫瘍を顕微鏡で見て、腫瘍の縁がカプセル(被膜)に完全に包まれている場合は腺腫で、カプセルが破れていたり、その中の血管に腫瘍細胞が入りこんでいたりする場合はがんと診断します。
したがって、理論的には細胞診で両者を区別することはできません。ただ細胞の様子や、超音波像から良性か悪性かおおよその判断をすることができる場合もあります。最近の超音波機器では腫瘍の血流や弾性を評価することもでき、両者の区別に役立つことがあります。
良性という見当をつけた場合も、経過観察は重要で、半年か1年おきに超音波検査をして、腫瘍の様子に変化がないかどうかチェックするのがよいでしょう。血液検査でサイログロブリンの値を継続的に見ていくことも参考になります。たとえ濾胞がんであっても、肺や骨などへの転移がなければそう怖くはないので、CTやシンチグラフィといった画像検査で肺や骨の状態を調べる場合もあります。色々な検査結果を総合してがんの可能性が残る場合、診断を兼ねた治療という意味合いで、手術を勧めることもあります。