低分化がんと判明。再手術は必要か
「濾胞性腫瘍の疑い」ということで、甲状腺左葉切除手術を行い、病理組織検査の結果、低分化がんと診断されました。主治医からは、再手術し、甲状腺を全摘した上で、放射性ヨウ素内用療法を行ったほうがいいと言われています。再手術を受けたほうがいいのでしょうか。
(58歳 女性 山形県)
A 再手術で甲状腺を全摘し、放射性ヨウ素内用療法を
低分化がんは従来、「低分化型の乳頭がん」「低分化型の濾胞がん」というような言われ方をしていたのが、最近になって、乳頭がんや濾胞がん(分化がん)とは独立した腫瘍組織型として定められた経緯があります。予後の良い「分化がん」と非常に予後の悪い「未分化がん」の中間に位置するがん、という意味です。
低分化がんの診断は組織構造によってつけられます。細胞が短冊状に並んでいる「索状」配列、島のように並んでいる「島状」配列、あるいは細胞が特定の構造を持たずに充満して並んでいる「充実性」といった、いわゆる「低分化成分」を持つがんが低分化がんです。ただし、低分化がんの定義には若干のばらつきがあります。例えば、日本の甲状腺がん取扱い規約では、少量でも低分化成分があれば、低分化がんと診断するのに対し、WHO(世界保健機関)の定義では、腫瘍全体のかなりの部分を低分化成分が占めているものを指します。
低分化がんは、普通の乳頭がんや濾胞がんと比べて予後が悪いとされており、ご相談者の場合のように、濾胞がん由来の低分化がんでは、肺や骨などに遠隔転移を起こす可能性が高いと考えられます。したがって、主治医の言うように、残りの甲状腺を全摘した上で、放射性ヨウ素内用療法を受けられることをお勧めします。術後は生涯にわたる甲状腺ホルモン薬の内服が必要となりますが、経験豊富な医師が丁寧に手術を行えば、反回神経麻痺や副甲状腺機能低下などの合併症の頻度は低く抑えられます。