甲状腺濾胞がんの可能性。手術前に画像診断などで診断はできないものか

回答者:杉谷 巌
がん研有明病院 頭頸科副部長
発行:2009年11月
更新:2013年10月

  

超音波検査の結果、甲状腺がんの疑いがあると指摘されました。中でも、比較的稀な甲状腺濾胞がんの可能性があるとのことです。しばらく経過を見て、腫瘍が大きくなるようなら手術をする予定です。手術前に、画像診断などで、診断はできないものなのでしょうか。

(山梨県 61歳 女性)

A 良性との区別が難しい濾胞がん。顕微鏡で調べる

甲状腺がんの診断は一般に、超音波検査と細胞診、血液検査などによって行いますが、濾胞がんの場合、良性腫瘍との区別が難しいことが多いのです。濾胞がんは腫瘍の全体像、とくにその縁(へり)の部分を見て診断するので、手術で切除した腫瘍を顕微鏡で調べて初めて診断がつけられるのです。

腫瘍の縁の被膜(カプセル)が破れていたり、被膜の中の血管内に腫瘍細胞が入っていたりしたら、濾胞がんです。最近では、腫瘍の内部の血流の様子を見るドプラーエコー検査や、腫瘍の硬さや弾性を調べるエラストグラフィというエコー検査が診断に有効ではないかと言われていますが確実ではありません。経験的に濾胞がんが疑わしい場合は手術を勧めますし、そうでない場合には経過を見ることが多いです。濾胞がんの中には、肺や骨に血行性の遠隔転移を起こす怖いものがあります。腫瘍は小さくても遠隔転移は起こりますし、腫瘍が大きくなれば遠隔転移を起こすというわけでもないようです。遠隔転移の明らかな濾胞がんの治療は、甲状腺を全摘して、術後に放射性ヨードによる内照射治療を行います。逆に濾胞がんであっても遠隔転移を起こさなければ怖くはありません。遠隔転移を起こさずに亡くなった方は当院ではおりません。ですから手術を決める前に、肺CTや骨シンチグラフィで、肺や骨に遠隔転移が起きていないかどうかを調べることもあります。しかしながらごく稀に、良性と思って経過観察中のものが突如遠隔転移を起こすことがあります。さらに稀ですが、手術後の病理検査で良性と診断されたにもかかわらず、後に骨転移が明らかになったりすることもあります。

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