甲状腺がんの手術で声がれなどが起こるか

回答者:林 隆一
国立がん研究センター東病院 頭頸部外科・外来部長
発行:2010年2月
更新:2013年11月

  

甲状腺がんの手術を間近に控えています。手術によって、声帯に傷がつき、声がかれたり、長時間話しにくくなったりする可能性はどれくらいあるのでしょうか。また、そうした症状が出た場合、改善させる方法はありますか。

(大阪府 女性 44歳)

A 声帯を動かす神経の麻痺が原因。改善方法もある

「声帯に傷がつき」とお書きですが、声帯そのものに傷がつくわけではなく、声がかすれるのは反回神経の麻痺が原因です。反回神経は声帯を動かす神経で、気管の左右両側に1本ずつあります。

甲状腺は気管と反回神経にくっつくような形で位置しています。甲状腺を全摘する手術の場合は左右両側の、反回神経を確認する必要があり、神経麻痺の症状が現れる割合は高まります。左右どちらかの甲状腺を切除する葉切除と呼ばれる手術の場合は、全摘手術に比べると、麻痺症状の起こる割合は低くなります。

声帯は一方の反回神経が麻痺し、その側の声帯が動かなくなると、支障のないほうの反回神経が麻痺を起こしている側を補うようになり、数カ月後には、麻痺の症状は当初よりは改善します。ただし、大きな声を出すことなどは、思うようにできないといったことはあります。

腫瘍がある部位によっても、神経麻痺の症状が出る割合や症状の重さは変わります。また、反回神経の周りにあるリンパ節に転移があり腫れている場合は、手術でリンパ節を郭清する操作で、反回神経を残しても、麻痺症状が出ることがあります。ただ、反回神経を温存できれば、通常、一時的な麻痺で済みます。

神経麻痺の症状が起こると、声帯の動きが悪くなって、声がかれたり、長い時間は話しにくくなったりします。

反回神経麻痺が起きた場合の治療法は幾つかあります。

その1つは、披裂軟骨内転術といわれる手術で、甲状腺がんの手術後、しばらくしても声がれがよくならない場合などに行われます。ほかには、声帯にコラーゲンを注射して、声帯を膨らませ、閉じやすくする治療法などがあります。

質問の文面には、甲状腺がんの詳しい病状などについては記述がありませんが、腫瘍が甲状腺内にとどまり、神経周囲のリンパ節転移がなければ、麻痺が起こる可能性はかなり低いと思います。

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