甲状腺の乳頭がんと診断。経過観察をすると言われたが…

回答者:林 隆一
国立がん研究センター東病院 頭頸科医長
発行:2005年4月
更新:2013年11月

  

37歳の主婦です。先日、甲状腺がん(乳頭がん)と診断されました。ただ、がんの大きさは1センチよりも小さく、悪性度は低いそうです。そのため、すぐに手術をしないで、定期的に検査を行いながら、経過を見ていくと主治医に言われました。がんなのに、このまま何もしなくても大丈夫なのでしょうか。とても不安です。

(福井県 女性 37歳)

A 乳頭がんは悪性度が低い。経過観察で対応することも

甲状腺はのどぼとけの下にある臓器で、甲状腺ホルモンを分泌しています。「左葉」と「右葉」、左葉と右葉の中心にある「峡」に分けられます。

甲状腺がんは、大きく「分化がん」と「未分化がん」の2つに分けられます。分化がんはさらに「乳頭がん」「濾胞がん」「髄様がん」の3つに分けられます。

甲状腺がんの中では乳頭がんが最も多く、甲状腺がんのおよそ9割を占めます。顕微鏡で見ると、乳頭(乳首)のような形をして増殖をしているので、乳頭がんと呼ばれます。

乳頭がんは一般に悪性度が低く、予後の非常によいがんです。

ご相談者のようなケースで治療をするとなると、まず行うのは手術です。一般的には、がんのある片側部分(左葉か右葉)を切除します。

微小な乳頭がんの場合、手術をしたほうがよいのか、経過観察でよいのかは、まだはっきりしたデータが出ていません。しかし、乳頭がんは悪性度が低いことから、がんの大きさが微小な場合は、経過観察をするケースが増えています。

実際、1センチ未満の乳頭がんが原因で亡くなることはまれです。ご相談者は、1センチ未満の微小な乳頭がんですから、手術をしないで、経過観察をすることは十分考えられます。

また、乳頭がんと濾胞がんは45歳以上と45歳未満で、病期の分類の仕方が違います。45歳未満では、仮に遠隔転移があっても、2期までにしか分類されません。それだけ、若い患者さんほど予後がよいということです。ご相談者は37歳ですから、その意味でも、定期検査を受けつつ、経過観察で対応することで大丈夫ではないかと思います。ご心配なら、セカンドオピニオンを受けられるのも1つの方法です。

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