散発性髄様がんの診断。家族への影響は

回答者:杉谷 巌
がん研有明病院 頭頸科副部長
発行:2013年4月
更新:2013年10月

  

甲状腺の髄様がんという診断を受けました。遺伝性である場合があるとのことで、遺伝子検査を受けたところ、遺伝性ではないことがわかりましたが、家族には本当に影響がないのでしょうか? 散発性である場合と遺伝性の場合では治療はちがうのでしょうか。

(埼玉県 女性 50歳)

A 遺伝子変異なければ家族に影響ない

甲状腺がんの髄様がんの場合はまず、遺伝性のがんでないかどうかを調べる遺伝子検査(RET遺伝子検査)を必ず行います。

RET遺伝子と呼ばれる遺伝子に変異があると、いずれ必ず甲状腺髄様がんにかかります。また、そのうちの多くの方の副腎に褐色細胞腫と呼ばれる腫瘍ができます。

もしご本人が遺伝性の髄様がんであることがわかれば、血縁者にもRET遺伝子検査を受けていただき、髄様がんの保因者であることがわかれば甲状腺、副腎の検査を行います。

現時点で異常がない場合には、経過観察する場合が多いですが、ご本人の希望により、予防的な甲状腺切除を行うこともあります。

相談者の場合、遺伝性ではなく散発性の髄様がんということですので、ご家族への影響は心配ありません。

手術は、遺伝性の場合ですと甲状腺内に髄様がんが多発するために、甲状腺の全摘が必須ですが、散発性の場合では、がんのできた側半分のみの切除で済む場合があります。ただし、リンパ節郭清はしっかりと行う必要があります。

リンパ節転移が数少なく、遠隔転移もなければ、手術で治癒する可能性が高いのですが、肝臓などに転移がある場合などの難治・転移性の髄様がんにも、最近になって朗報が舞い込んできました。

バンデタニブ(一般名)という分子標的薬が甲状腺髄様がん患者さんの無増悪生存期間を延長したとして、アメリカではすでに適用になったのです。

現在日本でも試験中ですので、近い将来、保険適用になるのではないかと言われています。

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