濾胞がんが骨転移。治療法を知りたい
38歳の妻のことでご相談です。妻は今年初め、甲状腺右葉に2センチほどの腫瘍が見つかり、手術で右葉を切除しました。くわしい検査で濾胞がんと診断され、経過観察をしていましたが最近、鎖骨が痛みだし、がんが転移していることがわかりました。骨に転移すると予後がとても悪くなると聞き、ショックを受けています。どのような治療を受ければいいのでしょうか。
(埼玉県 男性 40歳)
A 放射性ヨード治療が基本
ご相談のケースは、残念ながら予後のよくない例と思われます。甲状腺がんの骨転移は同時多発で起こることが多く、骨の痛みがきっかけで転移巣が見つかったということですので、目に見えない微小転移も含めて、全身にがんが広がっている可能性が高いと言えます。PET*、骨シンチグラフィ*などの検査を行い、転移の状況をくわしく調べたほうがいいでしょう。
濾胞がんの遠隔転移では全身療法である「放射性ヨード治療」が基本になります。甲状腺にはヨードを取り込む性質があり、甲状腺がんも同じ性質を持っています。そこで、ヨードの放射性同位体を体内に入れ、放射線でがんを選択的に攻撃するのが放射性ヨード治療です。残った甲状腺を全摘してから治療を行います。ただし、骨転移には劇的な効果が期待できないので、それに加え、放射線を外から当てて転移巣を叩く場合もあります。転移が鎖骨に限定しているようであれば、手術で転移巣を切除するのも選択肢の1つです。整形外科にも相談するといいでしょう。
さらに、がんによる骨破壊を防ぐ「ビスホスホネート製剤」も早くから使えば、症状を長く抑えられます(ただし、下あごの骨の溶解など重大な副作用に注意)。骨の痛みを伴うのであれば、鎮痛剤や医療用麻薬で痛みを抑えます。放射性核種治療*(ストロンチウム)も鎮痛効果が高いといわれています。骨転移した甲状腺がんの場合、根治は困難ですが、医療技術の発達によって、5年以上の生存もまれではなく、中には10年以上生存する患者さんもいます。あきらめず、前向きに治療に取り組んでください。
*PET=陽電子放射断層撮影 *骨シンチグラフィ=放射性薬物を使って、がんの骨転移がないかどうか調べる検査法
*放射性核種治療=骨破壊が盛んな部位に集まる放射性物質を利用して、がんの骨転移巣を選択的に攻撃する治療法