子宮体がんの化学療法で、人工透析の可能性は
母(68歳)が3月に子宮体がん(類内膜腺がん)で、子宮全摘手術を受けました。再発リスクが高いということで、術後に*タキソール、*パラプラチンによる抗がん薬治療を行う予定です。ただ、母は糖尿病を患っており、腎臓の機能が悪いため、抗がん薬を行うことで人工透析になる可能性があるとも言われました。母自身、人工透析は絶対に嫌だと言っています。主治医からは腎臓のことを考えて、抗がん薬の量を通常の8割程度に少なくして行うと言われています。抗がん薬治療後人工透析が必要になるケースは多いのでしょうか。医師からは人工透析を行うとしても一時的だと言われましたが、本当に止められるのでしょうか。
(42歳 女性 茨城県)
A 適切な抗がん薬の投与量で治療しながら 腎機能の維持は可能
産婦人科学講座生殖腫瘍学
准教授の織田克利さん
人工透析のリスクのある治療を避けたいということですが、再発リスクがある場合には、手術後に抗がん薬治療が通常選択されます。
*シスプラチンは腎臓への毒性が強いので、腎機能が心配ということであれば、パラプラチンを用いるのが良いでしょう。こうした場合、主治医の先生の言う通り、タキソールとパラプラチンの2薬で治療していく方法が広く行われています。
パラプラチンの投与量は腎機能を考慮した計算式で患者さんごとに設定するので、腎機能に合わせた投与ができます。パラプラチンの腎毒性はシスプラチンほど強くないので、しっかりと水分を摂りながら治療を行えば、抗がん薬治療中に人工透析になる人は少ないです。
主治医に「人工透析になっても一時的」と言われたとのことですが、糖尿病が背景にある場合、いったん透析を始めると、抗がん薬治療を止めたとしても、透析の必要がなくなるとは言い切れません。今の時点で腎機能がどうなのか、治療前に十分評価しておくことが大切です。
抗がん薬治療は、術後に6回行うことが多いですが、場合によってはコース数を調整することもありえます。
もし、腎機能が悪化してパラプラチンを使えないような場合には、再発リスクとの兼ね合いで中断する、もしくは放射線治療を行うことを考慮することも1つの選択肢です。糖尿病のコントロールも行いながら、血液検査などで腎機能が悪化していないかをきちんと確認しつつ、適切な量の抗がん薬を使用していけば、治療と腎機能の維持を両立させることは可能でしょう。
*タキソール=一般名パクリタキセル *パラプラチン=一般名カルボプラチン *シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ