術後、抗がん剤治療は必要か?

回答者:喜多川 亮
NTT東日本関東病院 産婦人科医師
発行:2012年3月
更新:2013年10月

  

不正性器出血のため検査したところ、2期の子宮肉腫と診断されました。すぐに広汎子宮全摘術を受け、手術は成功でした。しかし、がんが残っている場合もあると聞きました。どのくらいの確率で、再発するのでしょうか? また、術後に抗がん剤治療を行ったほうがよいのでしょうか。

(茨城県 女性 53歳)

A 抗がん剤治療を勧める

子宮肉腫の治療で大事なことは、手術で悪性腫瘍を完全に取除くことです。理由は、手術以外の治療法の、放射線治療や化学療法が、なかなか効きにくいからです。

しかし、2期の患者さんでも、完治する可能性は3~4割といわれております。他のがんに比べ、治る確率が低いといってよいでしょう。

再発の可能性を十分に考慮する必要があり、再発の場合、肺に転移することが1番多く、その割合は4割といわれています。また、がんが血液の流れに乗ってしまうことで、急速に進展することもあります。

よって、子宮肉腫は、再発を防ぐためにも、手術+αの治療が望まれます。まず放射線治療ですが、腫瘍を消失させる効果は期待できません。手術後の患者さんの骨盤に放射線を照射しても、再発率に変化がなかったというデータもあります。また化学療法においても、他の部位の肉腫でも使用されるアドリアシン、イホマイドといった薬剤を中心に検討されてきたのですが、がんが半分以下に小さくなる確率(奏効率)は20%前後と低い状況でした。

しかし、2002年に、アメリカのがんセンターで、タキソテールとジェムザールを組合せて投与してみたところ、5割の患者さんに効果があったという画期的なデータがでました。これについて、婦人科がんで多くのエビデンス(科学的根拠)を作ってきたアメリカの大規模臨床試験グループのGOGが追加の試験をしました。結果、割合は若干下がりましたが4割弱の患者さんに効果があり、今までにはなかった最も良い成績の治療法になりました。

子宮肉腫の患者さん自体が少ないため、2期の患者さんに限定して手術後にこの化学療法を行ったほうが良いかどうかの比較はなされておらず、十分な根拠があるとはいえません。

ただ、子宮肉腫は転移しやすく、患者さんの全身に抗がん剤を投与することは、現時点で1番理に叶った治療法だと考えられます。よって、2期でがんが全部取りきれたといっても、再発の微小な芽は肺にまで散らばっていると考えて全身の抗がん剤治療はしたほうがよいと思います。

ジェムザールの副作用には、間質性肺炎があります。実際に起こる割合は高く、こじれて亡くなってしまうこともあるので、早期発見が大事です。間質性肺炎の対応に慣れた、化学療法専門の医師が治療に携わったほうがいいでしょう。

また、タキソテール+ジェムザールの副作用には、白血球減少がよく見られます。そういった免疫力低下に伴う発熱への対応や予防にも対応できる、がん専門病院などのがん治療に十分な経験のある医師に治療をしてもらうのがいいでしょう。

アドリアシン=一般名ドキソルビシン イホマイド=一般名イホスファミド タキソテール=一般名ドセタキセル  ジェムザール=一般名ゲムシタビン GOG=Gyncologic Oncology Group 間質性肺炎=肺炎が、肺胞や肺細壁(間質)に起こる。非常に致命的であると同時に治療も難しい

同じカテゴリーの最新記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート10月 掲載記事更新!