ドイツがん患者REPORT 41 「定期検診とCT検査」

文・イラスト●小西雄三
発行:2018年3月
更新:2018年3月

  

懲りずに夢を見ながら」ロックギタリストを夢みてドイツに渡った青年が生活に追われるうち大腸がんに‥

腫瘍内科での定期検診

今年(2018年)も1月の初旬、腫瘍内科の定期検診を受けてきました。

8年近くも3カ月に1度、腫瘍内科の検診を受け続けています。

そこでの手順は、いつも同じです。最初に近況を聞かれ、このときに体調に問題があれば相談します。その後に診察台に乗り、聴診器を当てられて触診をされます。僕は、直腸がん・肝転移でしたので、重点的にその辺りをエコー検査されます。何も異常がなければ「また3カ月後に」となり、この間は約10分ほどで、その後、看護師さんから採血をされます。

待合室で自分の番を待つ時間は、その都度違います。長いときは1時間以上待たされることも多々ありますが、化学療法を受けている患者に問題が起こったり、急患を途中で受け入れたりと、いろいろ諸事情があるので、予約時間が遅れるのは仕方がないことなのでしょう。

僕にとって今回の定期検診は、3カ月前にゼローダ治療をやめてから初めて。とくに異常は見つからず、ホッとしました。しかし、以前肝臓に再発したときにはエコー検査と触診では発見できず、CT検査で初めてわかったので、エコー検査と触診だけではまだ「本当の安心」とはいかなくて、「CT検査で異常が見つからなかった」ということで、初めて僕は安心できるのです。

定期検査の流れ

放射線科も腫瘍内科も経営は個人のクリニックとなっていますが、両方とも赤十字病院の建物内にあります。腫瘍内科で診察と採血が終わると、そこでもらった紹介状を持って同じ建物内の放射線科に、CT検査の予約を取りに行きます。

処方箋や薬が出せないとか(基本、病院では処方箋は出せず、ホームドクターが出します)、いろんな手続きの問題があるので、こういう複雑に見えるシステムとなっていますが、慣れればそう手間にも感じません。

次の日にCT検査の予約が取れることもありますが、僕は2日間の期間を空けるようにしています。と言うのも腫瘍内科で採血した血液検査の結果がCT検査前に必要だからです。通常は次の日の午後にラボから結果が届きますが、検査結果が間に合わない場合は、せっかく予約したCT検査が延期となる場合もあるからです。

造影剤を注入するときに、甲状腺ホルモンの分泌が多すぎると危険なケースがあるから、血液検査結果が必要なんだそうです。僕が1度そういう状態になったときは、一時的に甲状腺ホルモンの分泌を下げる薬を服用してからCT検査を受けました。

甲状腺ホルモンの分泌が少ない場合は問題がないので、通常通り検査を受けることができます。僕はゼローダ治療を5年前に始める前から分泌が少なく、薬を服用していても標準以下のことが多いのですが、CT検査のときは、血液検査の甲状腺の数値を見て一喜一憂しています。

ゼローダ=一般名カペシタビン

CT検査は、技術の進歩で体の負担が軽減

6カ月に1度の割合で、今でもCT検査を受けていますが、技術の進歩で検査の負担が最近かなり軽減されました。

最初の手術・化学療法を始めて以来、僕は排便障害に悩まされ、ひどい腹痛と下痢が日常となっています。とにかく、水分を余分に取ると、我慢できなくなるくらいその症状がひどくなるのです。そういう僕にとって、造影剤1.5リットルを1時間半かけて飲むというのは、本当に地獄でした。検査の後に襲ってくる苦痛や惨状は、ひどいときは半日も続きました。なので検査の前に断食してみたり、いろいろ対策を取るのですが、本当に楽になるものはありませんでした。

それが今では、検査時に血管へ造影剤を注入するだけで終わりです。検査前に1時間半もかけて苦痛の造影剤を飲む必要がなくなり、患者の検査にかかる時間も大幅に短縮されました。僕にとっては、本当にうれしいことです。

CT検査が終了すると、30分から1時間ほど待合室で待ち、アナリスト(画像診断する専門家)が検証を終えて呼びに来ます。長い間、僕を担当してくれていたアナリストは、検査結果の説明はいつも一緒で、本当に簡単なものでした。

今回は、新しいアナリストが担当になり、いつもより丁寧な説明を受けました。その中で、僕にとって初めて知ったことがあります。それはラジオ波焼灼(しょうしゃく)術の治療でできた肝臓内の傷跡が少し縮小したという事実です。

治療したのはもう7年前、今でもそんな傷跡が残っていることすら知りませんでした。ずっと変化もなくそこに存在していたからなのでしょうか、今までのアナリストはその傷について説明したことはありませんでした。

他にとくに指摘されたのが、大腿骨の接続部分のことです。化学療法の副作用で、骨と骨の間がくっついているとのこと。以前にもそのことを指摘され、整形外科を受診しましたが「何もできない」と言われ、放っています。今のところ痛みはありません。

今回のアナリストは僕に説明するのが初めてということで、とくに丁寧に説明してくれたようでした。帰るときに、検査結果の画像CDを手渡されました。

CDはアナリストから手渡されたが、今回は自宅にも同じものが送られてきた

CTの結果は腫瘍内科に送られ、そこでも医師から説明を受け、必要な場合は治療へと進んでいきます。僕の場合はとくに問題があるときは腫瘍内科から直接連絡が来て、再度の診察がすぐに始まります。

CT検査に問題がないときは、3カ月後の定期検診のときに医師から説明を聞くことになります。説明はアナリストからすでに受けているので、本当に簡単なものとなります。

患者のデータは患者の物

日本でCT検査を受けたことがないので、姉に聞いた話ですが、ドイツと日本とではかなり違うようです。日本では、アナリストが患者に直接検査結果の説明を行うこともなく、検査結果のデータのCDをもらうこともないと聞きました。

ドイツでは患者のデータは患者のものです。例えばセカンドオピニオンをもらうときや、引っ越しなどで医師を変更する場合などでも、患者自身がデータを持っているほうが、都合がいいと思います。日本はどういう事情でそうなっていないのかわかりませんが、僕は、こういった部分は、ドイツのシステムほうがいいと思います。

検査直後に、アナリストから検査結果を聞けるというのも、いいと思います。彼らは、その分野の専門家で、新しい技術や知識をいつもアップデートしているのですから、医師の説明より劣っているとは思えませんし、医師もアナリストの結果から判断するのなら直接聞けたほうがいいと思います。もちろん治療方針や実際の治療は医師が行うのですが、ニュートラルな意見を聞けるのは、患者にとってもいいことだと思います。

しかし、CT検査とかの医療に関しては、何事も〝お客様は神様です〟とよく言う日本で、患者本位ではないような気になってきました。

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