ドイツがん患者REPORT 60 似非科学の健康検査機器⁉︎〝バイオスキャナー〟

文・イラスト●小西雄三
発行:2019年10月
更新:2019年10月

  

懲りずに夢を見ながら」ロックギタリストを夢みてドイツに渡った青年が生活に追われるうち大腸がんに‥

「健康に不安を感じるけど、面倒な検査は嫌だ」というのは、日本でもドイツでもみんなが共有する本音だと思います。僕もそうですよ、今でも。

センサーバーを握るだけで、コンピュータが健康状態をチェックして、体に不足しているものがあれば、それを補うサプリメントをその場で購入できる。予約や待ち時間もなし、採血すら必要のない〝バイオスキャナー〟なら、検査はお手軽にできます。

しかし、いくら便利な世の中になったとはいえ、「本当にそこまで科学技術が進んだのか?」

僕は科学的な論理を第一に考えますが、一方で昔ながらの風習や慣習、縁起までも信じているところがあります。しかし、自分が理解できないことは、まずは「本当かな?」と疑います。

ところが、ドイツには「うん?」というようなものを信じている人も多いようです。このバイオスキャナーによる検査に疑問を持ったテレビ番組を見たので、それについて今回は書きます。

簡単に不足栄養素がわかるバイオスキャナー

そのバイオスキャナーとは、「人間の細胞間の磁場を測定し、健康状態や栄養状態がわかる」と、製造元が説明する〝優れもの〟だそうです。

最近、薬局や一般内科医、ハイルプラクティカー(補完代替医療専門医療者)などで、「バイオスキャナーで、健康状態を検査をしてみませんか?」と勧められることがあるそうです。

検査はとても簡単で、苦痛もなく、時間もかかりません。少しの間、パソコンに繋がれた小さなボックスから伸びているセンサーバーを握るだけで、多くの検査ができるそうです。その結果、不足するミネラルやビタミンなどがあれば、サプリで補完することを勧められます。

番組では、覆面調査員が実際にその検査を試しました。手順はこうです。自分の性別・生年月日・身長・体重などをプログラムにインプットします。そしてセンサーバーを握ると、各臓器の健康状態がチェックされます。チェック項目は200もあり、その結果をプリントアウトしてくれます。検査結果の項目は、心臓の状態、骨粗鬆の状態、免疫状態、糖尿病、ビタミンやミネラルの状態などがあります。

医者などのエキスパートの意見は懐疑的で、バイオスキャナーの使用は無駄だと言います。番組では、製造元に問合せましたが、返答はありませんでした。

怪しい検査結果

男性とインプットして女性がセンサーバーを握ると、前立腺のアンドロゲンが表示された。金属製のロボットが握っても、鉄不足が表示されそう

内科医のマティアス・リードゥル(Dr. Matthias Riedl)に、番組が収集した検査結果を見せたところ、「たぶんこれは、最初にインプットされる性別・生年月日・身長・体重によって検査結果が導き出され、本当の意味でのバイオスキャナーによる検査結果ではないと思われる」と話します。

次は、それを証明するために、入手したバイオスキャナーでテストを試みました。

1.男性のデータを入力して、女性がセンサーを握る。すると検査結果に前立腺の男性ホルモンの項目が表示された。

2.市販されている車用の電球を、センサーの先を外して接続して作動させると、大変な鉄不足が表示された。

このテストで、センサーとプログラムが全く連動していなくて、正しい検査結果を望めるわけもないことがわかります。

覆面調査員のバイオスキャナーの検査結果、彼は亜鉛と強度のビタミン不足、とくにビタミンCの不足を指摘され、半年間のサプリの服用が推奨されました。薬局で、その検査結果を見せると、マルチビタミンとビタミンCのサプリの購入を勧められました。

「マルチビタミンにはビタミンCも十分入っているので、これではビタミンCの過剰摂取になるのでは?」という質問に、薬局販売員は「過剰な分は排出されるので、問題ありません」……不必要なものを、服用する必要ないのでは? と思うのですが……。

番組が、その薬局にバイオスキャナーについて問合せたところ、顧客のレゾナンス(反響)は大変良好とのことでした。検査費が30ユーロ、サプリ2種類で145ユーロ、検査費はともかく、かなりの高額なサプリだと思います。

違う薬局で、同じ調査員が検査をしてみたところ、今度は鉄と亜鉛が不足とのことで、鉄のサプリの常時服用を勧められました。検査費30ユーロ、鉄のサプリは108ユーロのところ、バイオスキャン顧客特価で98ユーロとのことでした。

病院で調査員の血液検査を行いましたが、異常はなく鉄不足でもありませんでした。バイオスキャナーの検査結果とはまるっきり違っていました。M・リードゥル医師は、鉄不足でない人が過剰に鉄分を摂ることは、医学的にも決して良いことではないと言います。僕も常時鉄不足気味なので、ときには補充薬を服用しますが、服用中はお腹の調子が決して良いとは思えないので、なるべく早くに服用を切り上げます。

おかしな検査結果とサプリの関係

バイオスキャナーに対する疑問の発端は、検査結果に基づく処方箋やカウンセリングが、いつも決まった薬やサプリに誘導されていることに疑問を持ったことだったそうです。インターネットでの医薬品やサプリの販売増加、健康保険の薬価料金の制限など、最近は薬局の経営も苦しいことは想像がつきます。

以前は、一般価格以上の値段で売る店を、「薬局のような店」と、ドイツ人は揶揄(やゆ)していましたが、薬局も今まで通りのやり方では経営がおぼつかなくなってきました。バイオスキャナーで、まず検査を行い、そこで悪い検査結果を見せ、健康不安をあおり、顧客や患者に薬やサプリを売りつける。バイオスキャナーを、新ビジネスとでも捉えているのでしょうか。

バイオスキャナーの製造元のホームページには、「OTC分野での最適なツール」と紹介されています。OTC(Over The Counter)とは、処方箋なしに売れるという意味です。このバイオスキャナーはいくらするのでしょうか? 製造元のプロフィールに書かれている値段は、プログラムとスキャナー機材の両方で約4,800ユーロです。中が空っぽなら、本当にうまい商売、濡れ手で粟ですね。

信じやすい「見えないもの」

人々は、見えないものを逆に信じてしまいやすいのだと思います。自分の理解を超える科学や、難しい構造の器械なども、鵜呑みで信じてしまう傾向があるように思います。少し考えてみれば、おかしいと気づくようなものでも……。

空気中にはいろんなものが存在していて、そのおかげで呼吸ができるし、植物は育ちます。良いものだけでなく、不純物や体に悪いものも多少は含まれています。見えないだけに、とんでもないような根拠でも、不安をあおられれば信じてしまう人もいて、それで風評被害が起こるんでしょうね。

今回のバイオスキャナーは、「科学」に名を借りた一種の詐欺だとも言えます。僕は試してみたいとは思いませんが、世の中には健康に不安を抱えている多くの人がいるのです。しかし、騙された人が悪いなんて言う世の中であっては困ります。それなら、目に見えないことや、理解ができないことでも理解しようとする努力は、そうならないための助けになると思います。そして、そうならないために「がんサポート」は、がんという病気のサポートをしてくれていると僕は思っています。

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