腫瘍内科医のひとりごと 73 「ステージ4は末期がんか?」

佐々木常雄 がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長
発行:2017年1月
更新:2017年1月

  

ささき つねお 1945年山形県出身。青森県立中央病院、国立がんセンターを経て75年都立駒込病院化学療法科。現在、がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長。著書に『がんを生きる』(講談社現代新書)など多数

Aさん(当時48歳/男性)はある鉄道会社に20年以上勤務し、健康で病院に行くことはありませんでした。

1カ月ほど前から下痢、便秘、腹痛などの症状を繰り返し、B病院を受診し、検査の結果、大腸がんで肝臓に転移があり、ステージ4と告げられました。手術によって大腸がんは切除できたのですが、肝臓への転移は数が多く、すべてを取りきることはできませんでした。

手術後に職場復帰したAさんは上司や同僚には病状を話し、治療のための休暇や勤務時間などで協力を得ることができました。薬剤での治療は2年にわたって行われ、肝臓の転移は超音波検査でがんとわかるところをラジオ波で焼灼(しょうしゃく)しました。

幸い、2年後には検査でがんは確認できないほどになり、定期的にB病院で検査を受け、5年後も再発はみられていません。

ステージ4とは

多くのがんでステージ4とは、がんが発生した場所以外に遠く離れた場所へ転移している場合につけられる病期で、最も進んだ状態です。ですからさらに病気が進むと命を失うことになるのです。

しかし、ステージ4だからといってすべての方の命が短いという訳ではありません。効く薬も少ない20年以上前のことですが、大腸がんでは、肝、肺、脳に転移した場合でも、その度ごとに手術で切除し長く生きられた方もおられます。今ではたくさん有効な薬剤が出現し、放射線治療も進歩しています。最近では大腸がんステージ4と診断されても、5年以上生きられる方はたくさんおられるのです。

がんの種類によって異なりますが、多くの医師は言います。

「○○がんです。ステージ4で治癒するのは難しいです」と。

しかし、5年以上再発がなく治癒されたと考えられる方もわずかではありません。

鳥越俊太郎さんは大腸がんステージ4(確か肝、肺転移)を克服され、昨年(2016年)都知事選挙に出馬されました。

テレビで拝見したそのときの第一声は「がん検診100%」でした。きっと長かったがんとの闘いを思い出されてのことであったのだろうと推測されます。

生きていればこそ

ひと口に乳がんステージ4といっても多彩です。

乳がんで骨転移があればステージ4となりますが、骨転移したからといって直接命にかかわる訳ではありません。放射線治療やホルモン療法によって5年以上生きられる方は多く、治癒された方も希ではありません。

乳がんの小林麻央さんはご自分のブログに「生きたい」と書かれ、それが報道されています。生きてください。あの若さで、あんなに可愛い子供たちを残して死ねる訳はないと思います。

詳しくはわかりませんが、樹木希林さんは「全身がん」と公言されて数年経ちましたが、最近でも時々にテレビで拝見します。

私はいろいろながんでステージ4から病状が進んで、たくさんの患者さんを看取りましたが、長年生きられた方、そして治癒された方もたくさん経験しました。ステージ4イコール末期がんではないのです。

ステージ4と言われて、覚悟はしても「生きたい」のは当たり前で当然です。医学は日進月歩です。生きましょう、生きていればこそです。

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