腫瘍内科医のひとりごと 114 がん診療と新型コロナウイルス感染症:がん患者さん向けQ&A

佐々木常雄 がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長
発行:2020年5月18日
更新:2020年5月

  

ささき つねお 1945年山形県出身。青森県立中央病院、国立がんセンターを経て75年都立駒込病院化学療法科。現在、がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長。著書に『がんを生きる』(講談社現代新書)など多数

新型コロナウイルスの流行で、がんではないかと心配されている患者さん、がんと診断された患者さん、これから、手術、放射線治療、化学療法などを受ける、あるいは治療中の患者さん、皆さん不安な思いでおられると思います。

日本臨床腫瘍学会(JSMO)が「がん診療と新型コロナウイルス感染症:がん患者さん向けQ&A」(4月20日更新)を公開しています。

この中では、
1.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について
2.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染に対する備え
3.電話診療(またはオンライン診療)について教えてください
4.がん治療をどのように受ければよいですか?
――について書かれています。

記事体裁の都合で、「4.がん治療をどのように受ければよいですか?」の一部を紹介します。

これらの内容は、今後、流行の状況などによって、随時、更新されると思います。また、詳しくは学会ホームページをぜひご覧ください。

がん治療をどのように受ければよいですか?

がんの病状と新型コロナウイルスの感染リスクの程度により考えますが、基本的には以下の通りです。担当医の先生とよく話し合って下さい。

1)がんが疑われる場合にがん診断のための検査はどうしますか?

・前述の症状(「1.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について」に記載:咳、息切れ、筋肉痛、発熱、嗅覚異常/匂いがしない、味覚異常など)が無ければ、予定通り検査を受けてください。非常事態宣言の地域や感染リスクの高い地域では、2~4週検査の延期を考えることができます。

2)新たにがんと診断された患者さんでは、手術を受けたほうが良いですか?

・遅延無く、手術が行われるべきです。同様に、術前の化学療法が行われた患者さんも、遅延なく行われるべきです。(以下略)

3)術後の化学療法は行うべきですか?

・手術結果において再発リスクが高い患者さん(ハイリスク症例)や中等度の患者さん、とくにハイリスク症例では、化学療法が行われるべきであると考えられます。(以下略)

4)化学放射線療法は続けるべきでしょうか?

・化学療法と放射線療法を併用する化学放射療法は、通常は根治を目指しているので、続けるべきです。

5)化学療法は続けるべきでしょうか?

・がんの種類(臓器)にもよりますが、一般的には続けるべきであると考えられます。

・場合によってはプロトコールを(略)……変更する。可能であれば点滴治療から内服薬に変更する、など受診回数を減らすことも考慮されます。(以下略)

6)維持療法は続けるべきでしょうか?

・がんの種類(臓器)にもよりますが、一般的には続けることが考慮されます。(以下略)

以上、これらはあくまでも一般的な場合で、1人ひとりの患者さんの状況は異なります。ぜひ担当医とよく相談されるようにお願いいたします。

5月10日、日本癌学会(JCA)、日本癌治療学会(JSCO)、日本臨床腫瘍学会(JSMO)合同で*1「新型コロナウイルス感染症とがん診療についてQ&A」をWeb公開しました(*2日本癌治療学会 がん治療の案内板)。各種、それぞれのがんについても記載されています。

大変な状況ですが、ぜひ、がんもコロナも克服しましょう。

日本癌治療学会,日本癌学会,日本臨床腫瘍学会(3学会合同作成)
がん診療と新型コロナウイルス感染症:がん患者さん向けQ&A

*1日本癌治療学会(JSCO)がん治療の案内版-患者・市民のみなさまへ-
新型コロナウイルス感染症とがん診療についてQ&A

*2日本癌学会(JCA)がん相談について(一般の方へ)
新型コロナウイルス感染症とがん診療について(患者さん向け)Q&A

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