腫瘍内科医のひとりごと 119 黄色い爪

佐々木常雄 がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長
発行:2020年11月
更新:2020年11月

  

ささき つねお 1945年山形県出身。青森県立中央病院、国立がんセンターを経て75年都立駒込病院化学療法科。現在、がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長。著書に『がんを生きる』(講談社現代新書)など多数

食品売り場にいろんな種類のミカンがたくさん出る時期になりました。北国育ちの私は、冬になると毎年、こたつの中でミカンを1日何個も食べました。高校生の頃、食べ過ぎで「体が黄色い」と言われたこともありました。

 

 

 

 

 

黄疸ではないのに……

写真:コスモス

ある外来診察でのことです。皮膚科から60代の女性が、「爪が黄色い」とのことで紹介されてきました。しかし、皮膚や眼の結膜は黄色くはなく、肝機能検査は問題なし、貧血もありませんので黄疸ではないのです。

ほかには下肢にすこし浮腫みがある程度で、体表に異常ありません。ところが、確かに爪は黄色いのです。

20年間の喫煙歴があり、3年ほど前、肺炎を起こした既往がありました。すこし息切れがするとのことでしたが、酸素飽和度は96%と問題なく、聴診のあとに胸部X線検査をしました。

X線画像では、左右に胸水を認めました。とくに右が多く、すぐに胸部CT検査を行いました。肺繊維症がありましたが、肺結核、肺がんは否定的でした。がんによる胸水(がん性胸膜炎)ではないのです。

とても稀な「黄色爪症候群」と診断しました。原因は、リンパ系のトラブルではないかと考えられていますが、胸水と黄色い爪の関係はわかっていません。しかし、胸水がコントロールされると黄色い爪の色も良くなるといわれています。

慢性の副鼻腔炎や慢性の気管支炎、気管支拡張症や、膠原病がもとで胸水と黄色爪が起こることもあるようです。

この方は定期的に呼吸器内科で診てもらうことにしました。

3カ月経って、呼吸器内科受診後、私のところに寄ってくれました。爪の色は変わりませんでしたが、幸い体調がよく、元気でした。

爪への影響は化学療法でも

爪は大きな病気をすると、2、3カ月後に変形したりすることがありますし、稀ですが、爪そのものにも悪性黒色腫のようながんができることもあります。

抗がん薬投与の患者さんでは、多くは投与期間が長くなった場合ですが、爪が黒くなることがあります。表皮基底層や、毛嚢(もうのう)、爪の細胞は、細胞分裂が活発であるため、抗がん薬の影響を受けやすいとされています。

爪に障害を起こす可能性のある抗がん薬には、5-FU(一般名フルオロウラシル)、TS-1(同S-1テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)、ゼローダ(同カペシタビン)、タキソテール(同ドセタキセル)、タキソール(同パクリタキセル)、キロサイド(同シタラビン)などがあります。

抗がん薬による手足の皮膚や爪に生じる副作用の総称を「手足症候群」と言います。また、分子標的薬でも、皮膚炎、爪周囲炎がみられます。爪ばかりではなく、皮膚の症状が進行すると水泡や潰瘍(かいよう)で、歩行困難になることもあります。遠慮なく、早い時期に担当医に話されるのが良いと思います。

対策として、抗がん薬投与の加減、保湿剤などでのスキンケア、ときにはステロイドホルモン外用薬を用います。

体調不良や病気治療中の場合は、マニキュアなど爪の美容はあまり勧めません。診察の妨げになりますから。

皮膚も爪も体の大切な一部です。コロナ禍でお互いにマスクはしていても、たとえ爪のことでも、何か変わったこと、気になったことがあれば、担当医にはしっかり話してください。

冬は乾燥する時期です。からだをいたわりながら過ごしましょう。

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