腫瘍内科医のひとりごと 132 2021年どんな年だったか

佐々木常雄 がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長
発行:2021年12月
更新:2021年12月

  

ささき つねお 1945年山形県出身。青森県立中央病院、国立がんセンターを経て75年都立駒込病院化学療法科。現在、がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長。著書に『がんを生きる』(講談社現代新書)など多数

コロナ(COVID-19)感染の蔓延防止・緊急事態宣言の繰り返しで過ぎた1年。東京オリンピック・パラリンピックが行われるかどうか、気をもんだ時期もありました。そして、総理の顔を変えての衆議院の選挙でした。

いまのうちに医療体制の充実を

10月後半になって急激に感染者、死者が減ったのは、ワクチンの効果だけなのか詳細はわかりません。世界では、まだまだ感染者、死者は多い現状です。専門家は、第6波は必ず来るといっています。まだまだ注意して過ごしたいものです。

この間、1カ月前までは元気で、死ぬはずのない方が亡くなり、幸いにも助かった方でも後遺症に悩んでいます。そして、燃え尽きた医療者、介護者はたくさんおられます。

いざというときのために、いまのうちに医療体制を充実させておいて欲しいのですが、一方では、公的病院の統廃合が進んでいます。

閉塞感の続いたこの間、明るい話題はロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手の活躍くらいなものでした。

がん検診者数は3割も減ったことが報道されていますが、がん治療はどうだったか、手術は遅れなかったか。手術後の再発例などの薬物療法は、攻めではなく、守りになっていたのではないか? 点滴治療を主体にしてきたのが、内服薬に変えた病院の話もありました。

病院で感染のクラスターがでる状況で、やむを得なかったと思われることがたくさんあったと思います。

日本緩和医療学会のパンフレットには

「新型コロナウイルス感染症が拡大しているこの時期に いのちに関わるような病気で入院中の 患者さんのご家族にお伝えしたいこと」として、日本緩和医療学会が厚労省委託事業として作成されたパンフレットが目に止まりました。

①まず、ご家族もできる限り感染を予防してください
②病室に持ち込めるようなら、ご家族の写真やメッセージカードを用意されてはいかがでしょうか?
③ノートのやりとりで想いを伝えてみてはどうでしょうか?
④スマートフォンやタブレットの使用については、 病院スタッフと相談してください
⑤患者さんのことをたくさん教えてください
⑥可能ならご自宅での介護を検討されませんか?

気になったのはこの6番目のことです。6の説明では、「入院病棟における面会制限は、残念ながらしばらくは続きそうです。したがって、人生の残り時間が短い時期にご家族と離ればなれになってしまうかもしれません。病棟スタッフや、がん相談支援センターの医療ソーシャルワーカー、地域包括支援センター等にご相談の上で、お住まいの地域の在宅医療の状況によっては、ご自宅での介護を検討されるのも一つの方法かもしれません」

それぞれ家庭で、社会でいろいろな事情があります。また、在宅医療でも大変な状況であることが報道されています。皆さん、おそらく、それぞれの病気で、ぎりぎりの状況で入院されているのだと思います。在宅が難しいからこそ入院している方もおられます。

また、患者が在宅となるために、家族が介護離職される方は年間約10万人もおられます。学会として、家族に⑥のような呼びかけをするのは、どうしたものかと疑問に思いました。

なによりも、このままコロナが収まり、心身ともつらいことが少なくなることを祈っております。

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