腫瘍内科医のひとりごと 152 院外処方箋に検査値が載る

佐々木常雄 がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長
発行:2023年8月
更新:2023年8月

  

ささき つねお 1945年山形県出身。青森県立中央病院、国立がんセンターを経て75年都立駒込病院化学療法科。現在、がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長。著書に『がんを生きる』(講談社現代新書)など多数

先日、某病院の外来で診察後に、院外処方箋が発行されました。この処方箋には、「直近3カ月の検査より」と、採血の検査値が印刷されていました。

白血球数、血色素値、血小板数等の血算値、Na、K、アルブミン、CK、LDH、AST、ALT、クレアチニン、ヘモグロビンA1cなどの生化学値です。

必要なデータを薬局とも共有する

自分の採血の結果は、いつも診察時に担当医が紙に印刷してくださって、私はそれを頂いておりました。今回は、採血の結果の一部が処方箋の半分に印刷されているのです。

病院のホームページには、「地域保険薬局との連携の一環として、患者さんの検査値の一部を処方監査に必要な情報として院外処方箋に記載することとした」とありました。

患者の検査データの一部を薬局へ開示するのです。

薬によっては、腎障害、肝障害などをきたす可能性があります。また、もともと肝、腎障害を持っている患者の場合、薬剤の減量などが必要なこともある訳です。

患者の自宅に近いであろう薬局でも、その患者の検査データを知って、確認して処方する。それは大切なことだと思いました。

必要なデータを薬局も共有する、より安全に処方される、そのように医療は進んでいるのだと思いました。

安全・安心医療において大切なこと

病院のホームページには「副作用の内容、異常値の程度・数値の傾向・期間、患者さんの症状の有無等から、投与量の減量もしくは中止が必要な場合に疑義照会をしてください」とありました。疑義照会とは、薬剤師が処方箋の内容について、発行した医師に問い合わせをすることです。

一方で、医療者は、患者の病名など、個人情報を守ることも大切なことです。ずいぶん前のことですが、日本で初めてHIV感染症が明らかになった頃、議論になったことがあります。

救急隊員が、出血している方を病院に運んで、「この方は、HIVは大丈夫ですか?」と医師に問いました。確か、そのときの医師は「個人情報で言えません。手をよく洗ってください」と答えたと記憶しています。

今では、救急隊員の感染予防対策のマニュアルが出来ており、HIVや肝炎等においても適切に対応されているのではないかと思います。

この度の院外処方箋に患者の検査値の一部を記載して薬局へ開示することには、その記載する項目など、きっといろいろな議論が病院であったのではないかと思います。しかし、安全・安心医療において、とても大切なことと思いました。

患者の権利として、個人の尊厳、平等、最善の医療を受ける権利、医療内容を知る権利、自己決定権、検証権(セカンドオピニオン、診療記録の閲覧)、秘密保持などがあげられます。

医療において重要なことは、インフォームドコンセント、「自分のことは自分で決める」ことが基本です。そして、個人情報保護、秘密保持もとても大切なことです。

ここで頭に浮かんだのが、「たとえいかなる脅迫があろうと、生命の始まりから人命を最大限に尊重し続ける」というジュネーブ宣言(世界医師会宣言)でした。

ジュネーブ宣言=医の倫理に関する規定(1948年)。ヒポクラテスの誓いの倫理的精神を現代化・公式化したもの。最新2017年版までに5回改定されている

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