米国のがん患者における併存疾患の有病率と重症度別の生存率

データからみた がん患者における併存疾患の有病率

文●「がんサポート」編集部
(2015年12月)

  

特集1「併存疾患の基礎知識」においても述べられているように、わが国においては「がん登録」のより充実した整備が進められているものの、残念ながら「がん患者における併存疾患の罹患動向」に関しては、具体的な数字(有病者数、生存率など)が得られていないのが現状だ。

既存のデータから併存疾患の有病者数(率)を算出する試みもなされているが、如何せん現在実施されている「がん登録」では、登録項目に「併存疾患」が存在しないため、十分な成果が得られていない。そこで、人種や医療体制などは異なるが、米国で65歳以上の高齢者における併存疾患の有病者数(率)などを示したレポートがあるので紹介する。

「がん患者における併存疾患の動向」を具体的数字で示すことにより、今後、高齢化に伴いわが国でも大きな問題になると思われる「がん患者における併存疾患」への理解を深める一助としたい。

がんの罹患率・死亡率を定期的に公表

米国では、がんの罹患率・死亡率を定期的に調査し、年次レポートとして公表している。2014年5月発行の米国がん協会(ACS)誌「Cancer」には、「1975~2010年での肺がん、大腸がん、乳がん、前立腺がん患者おける併存疾患有病率と併存疾患が生存に及ぼす影響に関する年次報告」と題するタイトルのレポートが掲載されている()。

ACS、米国疾病管理予防センター(CDC)、米国立がん研究所(NCI)、北米がん登録協会(NAACCR)が共同で作成した、米国でのがん発生および死亡データの報告書である。

1998年に発行された第1回レポートでは、1930年代以降、がんによる死亡が減少傾向にあることが示された。年次ごとに特定のトピックス(項目)が選定され、より掘り下げた分析が行われている。

そして今回のトピックスが、主要な4大がん(乳がん、前立腺がん、大腸がん、肺がん:患者数約64万人)を対象とした前記のタイトルのものである。

全がん患者(約105万7,000人)で併存疾患の罹患傾向も示されており、そのままわが国には適応できないものの、概要を知る上では参考になると考えられる。

報告書では、年齢や性差などをマッチングさせたがん以外の疾患に罹患している患者との比較も行われており、興味深い内容になっている。

“Annual Report to the Nation on the Status of Cancer, 1975-2010, Featuring Prevalence of Comorbidity and Impact on Survival Among Persons With Lung, Colorectal, Breast, or Prostate Cancer” ,Cancer : May 1, 2014

糖尿病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などが上位を占める

報告書では、併存疾患として糖尿病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、うっ血性心不全、脳血管障害、末梢血管障害、慢性腎不全、リウマチ性疾患、心筋梗塞既往歴、潰瘍性疾患、認知症など16種類が取り上げられている。表1はがん種別にこれら併存疾患の有病率を示したものである。

■表1 1992-2005年間に診断された66歳以上のがん患者における併存疾患の有病率

それによると有病率の高い疾患として、全がん患者では糖尿病(続発症を含む)16.0%、COPD15.5%、うっ血性心不全9.7%、脳血管障害6.0%、末梢血管障害4.3%、慢性腎不全2.1%、リウマチ性疾患2.0%、心筋梗塞既往歴2.0%などが上位にあげられている。

がん種別にみると、唯一、肺がんにおいてCOPDが33.6%と糖尿病14.7%を大きく上回っているが、他のがん種および非がん患者では、全がん患者での有病順位と数字の差はあれ同じ傾向を示している。

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