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安心して臨床試験を受けるための基礎知識
2.臨床試験はどう進められるの? 一般薬の場合

監修:渡辺亨 浜松オンコロジーセンター長
取材・文:林義人
発行:2006年12月
更新:2013年12月

  

渡辺亨さん
浜松オンコロジーセンター長の
渡辺亨さん

10年以上、100億円をかけて新薬誕生

1つの新しい薬が開発され、世の中に登場するまで、実際には10年以上もの長い期間と100億円ものお金がかかるといわれる。それほどの期間と費用がかかるのは、新薬が誕生するまでにとても複雑なプロセスを経なければならないからだ。

抗がん剤の臨床試験の進められ方について考えるために、まず高血圧や、糖尿病、抗生物質、鎮痛薬などの一般的な医薬品が、市場に出るまでどのようなプロセスを経て市場に登場するかを見てみよう。

(1) 基礎研究(2~3年)

植物・鉱物・土中の菌・海洋動物などの自然界に存在する化合物から有効成分を抽出したり、化学合成などの方法によって薬としての作用を持つ「薬の候補」を見つけだす研究。対象となる化合物の性質や化学構造を調べ、候補の中から「スクリーニング(ふるい分け)」する試験を行って取捨選択し、医薬品として使えそうなものへと候補を絞る。

(2)非臨床試験(3~5年)

薬としての可能性のある化合物を、実験動物や試験管の中での培養細胞などを用いた実験で検討し、それが体の中に入るとどのように吸収、分布、代謝、排泄されるかを詳しく調べ、その有効性と安全性(毒性)に見当をつけていく。また、薬としての品質や安定性についても試験を行いさらに「薬の候補」をさらに絞り込んでいく。

(3) 臨床試験(3~7年)

非臨床試験をパスした「薬の候補」が、人間にとって有効かつ安全なものかどうかを調べる試験。大きく第1相、第2相、第3相という3つの段階がある。

[1]第1相試験(フェーズ1)
今まで動物や培養細胞でしか調べていなかった新しい「薬の候補」を、初めて人を対象に用いる臨床試験。主として副作用など安全性を確認する試験からスタートする。どんな種類の副作用が出るのかを知り、どんな対策が必要か、どんな投与量が妥当かということを調べていく。血液や尿などから、治験薬の体内での吸収のされ方や、排出までの時間などの基本的なデータも収集する。この段階で、もし副作用などがみられた場合、再び非臨床試験に戻し、周辺化合物の探索から再出発することもある。対象となる被験者は20人程度となる。この段階では治療効果はほとんど期待できない。

[2]第2相試験(フェーズ2)
数10人の患者さんを対象に治験薬を投与し、その有効性と安全性を調べる試験。治験薬が、初めてその治療すべき病気にかかった患者さんに投与され、効き目があるのか、安全に使用できるのかを試す。薬が体内でどのように吸収、分布、代謝、排泄されるかや、投与方法・期間などの基礎的なデータを集め、最小有効量・最大安全量などを検討したうえで、実際に薬として使用するときの適用範囲を決定する。有効成分が入っていない「プラシーボ」と呼ばれる偽薬との比較試験が行われることもある(ランダム化[無作為化]比較第2相試験と呼ぶ)。

[3]第3相試験(フェーズ3)
多数の患者さんを対象して有効性と安全性を調べる最終段階のランダム化比較試験。「プラシーボ対新薬」、「従来薬+プラシーボ対従来薬+新薬」という形で、病院などで使用されたときの効き目、副作用などを確認していく。それまであった標準的な薬に比べて確かに効き目があるとか副作用が少ないとか、他に何かすぐれた特徴があるかどうかを調べるのが目的となる。また、標準的な薬ができていない分野なら、プラシーボと比べて効果が優れているかどうかを無作為に選んだグループで比較して調べる「二重盲検法」という試験を行う。被験者である患者さんの病気の程度や、食生活習慣の違いなどの影響によるデータのかたよりが起こらないように、できるだけ多くの患者を対象にし、一般の病院やクリニックでも実施する。

(4) 承認申請・製造販売(2~3年)

従来の医薬品や治療法より、高い有用性があると確認された薬について、厚生労働省にから製造承認を得るための申請を行う。厚生労働省の諮問機関のひとつである中央薬事審議会などの審査にパスし、厚生労働大臣が承認すると、製造承認が与えられる。承認を得た製薬会社では、品質管理などに関する規則に基づきつつ、製造となる。

[抗がん剤の開発]
図:抗がん剤の開発

抗がん剤の開発には膨大な費用と長い年月がかかる。その上がん患者さんを使って臨床試験をしなければならない


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