• rate
  • rate
  • rate

血糖値の異常でがんがわかる場合も
何がわかるの? 血液・尿検査

監修:前川真人 浜松医科大学臨床検査医学講座教授
取材・文:平出浩
発行:2009年1月
更新:2019年7月

  
前川真人さん
浜松医科大学
臨床検査医学講座教授の
前川真人さん

通常の健康診断、さらにはがんの検査をする上で、必ず行う血液・尿検査。受けている側としては、何を調べているのかよく理解せず、漫然と受けている方も多いのではないだろうか。そこで今回は、血液や尿検査で一体何を調べているのか、何が分かるのか。さらには検査数値を見る上で注意すべきことは何か、専門家に話を聞いた。

約5パーセントの人は必ず基準範囲から外れる

会社や自治体が実施している健康診断や人間ドックでは、ほぼ必ず血液検査と尿検査が含まれている。そして、これらの検査には「正常値(正常範囲)」が設けられている。しかし最近は、「基準範囲」と呼ぶのがより正確であると、浜松医科大学臨床検査医学講座教授の前川真人さんはいう。

血液検査や尿検査の基準は、なぜ正常値(正常範囲)から基準範囲(基準値)に変わったのだろうか。

一般的に臨床症状もなく臨床検査データに異常を示さない人を健常人と規定し、その健常人が示す数値の「平均値±2SD(標準偏差)」を計算し、この範囲を基準範囲、平均値を基準値と呼ぶ。健常人の約95パーセントがこの範囲に含まれる。平均値±2SDの範囲とは、身近なものでは偏差値で30から70の範囲である。5パーセントほどの人はその範囲から外れるようになっている。

かつてはこの約95パーセントの中に入る人の値を正常値と呼んでいた。ただし、残りの5パーセントに入るからといって、必ずしも“異常”なわけではない。反対に、正常値に入っていても、何かしらの問題があることもある。しかも、かつての正常値は、健常人の厳密な規定が十分行われずに決められていた。そうした状況を踏まえ、正常値は基準範囲に改められたというわけだ。また、基準値は、「値」という語がある1点を示すため、いくつからいくつという範囲を示す場合は「基準範囲」というのが的確な表現である。

ただし現実には、健康診断や人間ドックの検査結果表には、「基準値」の文字が見られるし、便宜上「正常値」という言葉を使う医師もいる。

[集団と個人の基準範囲と、異常を発見するタイミング]
図:集団と個人の基準範囲と、異常を発見するタイミング

いわゆる「集団」における基準範囲に入らないからといって必ずしも“異常”とは限らない。自分自身の基準範囲をきちんと把握することが大切だ

「自分の基準範囲」を把握することが大切

健康診断などで基準範囲に入っているのか確認することはもちろん大切だが、基準範囲には“落とし穴”もあると、前川さんは話す。

「基準範囲には95パーセントほどの人しか入らないため、検査をたくさん行えば行うほど、基準範囲外の値がまったくない、つまり全ての検査で「基準範囲内」の人はどんどん減っていきます。この点は注意しておく必要があります」

たとえば、2項目の検査を行えば、全体の中で90パーセントほどの人だけが2項目とも基準範囲になる(0.95×0.95=0.9025となるため)。健康診断で20項目の検査が行われると、0.95の20乗で、およそ36パーセントの人だけがすべての項目で基準範囲内に収まる計算になる。これは、前述のように、基準範囲の決め方がそのようにできているためだ。

とはいえ、基準範囲外だからといって、必ずしも異常であるとも限らない。では、何に気をつけていればよいのだろうか。 前川さんは「自分の基準範囲を把握することがとても大切」と話す。

たとえば、白血球数の基準範囲は通常、1マイクロリットル(1ミリリットルの1000分の1)あたり、3500~9000個ほどである。しかし、いつも1万個くらいの白血球数があって、健康で何の問題もなければ、その数値が「その人にとっての基準」ということもある。

ところが、いつも1万個ある白血球数が5000個になったとする。5000個は一般的には基準範囲内で全く問題ない数値なのだが、このような変化が起きることは、むしろ何かしら白血球数が減少する異常が隠されている可能性があると前川さんは指摘する。

現在の健康診断や人間ドックでは、各個人の基準範囲までは見ているとはいえない。では、検査結果は健康にどのように役立てるのがよいのだろうか。

「基準範囲内かどうかを見るのももちろん大切ですが、それだけではなく、毎年の数値の変動をチェックすることも、同様に大切です」(前川さん)。毎年受ける検査結果は捨てずにファイルしておき、比較して見直してみるとよいだろう。

[健常人と急性骨髄性白血病患者の血液標本]

白血球数が7400の健常人の血液標本

白血球数が7400の健常人の血液標本。正常の白血球が2個観察できる

白血球数が51000の急性骨髄性白血病患者の血液標本

白血球数が51000の急性骨髄性白血病患者の血液標本。ほとんどの白血球が異常な細胞(白血病細胞)となっている


基準範囲は施設によって異なる

写真:生化学自動分析機

生化学自動分析機。この機械1台で、AST、ALTなど40項目の値がわかる

血液検査や尿検査の基準範囲は、年齢によっても異なることがある。この点も、検査結果だけでは把握しきれない。年齢との関係はどのように見ればよいのだろうか。

「検査項目によりますが、一般的には、増えていく、ないしは減っていくといったように、どちらかの方向に緩やかに変化していく場合は、加齢による変化の場合もある。加齢による変化なのか、病気の発症によるものなのか、判定しなければならない」(前川さん)という。

また、検査結果は検査を行う施設によって基準範囲が異なる場合がある。なぜこうしたことが起こるのだろうか。

「施設によって、測定法が異なるからです。測定法が異なると、単位が違って、基準範囲の桁が違ってくることもあります。ある施設では100~200が基準範囲なのに、別の施設では1000~2000が基準範囲という項目もあります」(前川さん)。しかし、こうした違いは各施設の基準範囲と比べてみることで、ある程度把握できるという。

とはいえ、問題がないわけではない。たとえば、測定する分析機器や測定試薬などによっては、平均の分布がずれることもある。そのため現在、日本臨床検査標準協議会や日本臨床化学会、日本臨床検査医学会などが中心になって、測定法・測定値を統一化し、ひいては全国共通の基準範囲を作る研究を進めている。

同じカテゴリーの最新記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート10月 掲載記事更新!