- ホーム >
- 検査・治療法 >
- 検査 >
- 検査画像の見方、読み方
食道がん・食道内視鏡
進行すると周囲の粘膜が赤っぽくなり、しばしば出血跡が
もりやま のりゆき
1947年生まれ。1973年、千葉大学医学部卒業。米国メイヨークリニック客員医師等を経て、89年、国立がん研究センター放射線診断部医長、98年、同中央病院放射線診断部部長で、現在に至る。ヘリカルスキャンX線CT装置の開発で通商産業大臣賞受賞、高松宮妃癌研究基金学術賞受賞。専門は腹部画像診断
患者プロフィール
50歳の男性Hさん。2年ほど前から、ときどき食物を呑み込むときにつっかかるような感じがあった。3カ月ほど前からとくに肉を食したときに違和感が顕著になり受診。食道の中央付近に約7センチの進行がんが発見された
胃カメラに似た食道内視鏡検査
食道は喉頭の後ろ付近からはじまり、横隔膜の下部で胃とつながる長さ25~30センチの管状の臓器です。食道がんは、この内腔の粘膜から発生します。
がんが大きくなると、食道の内腔のほうへせり出し、内腔が次第に狭くなるとともに、食道壁にも潜り込んでいき、壁を突破すると周囲にある気管や大動脈に食い込んでいきます。
しかし、初期では自覚症状はほとんどありません。進行するにつれものを呑み込むときの違和感、異常を感ずることが多くなり、診断がつく時点では7割以上の人が、その症状を訴えるという調査結果があります。Hさんのように肉を食べるときに嚥下異常を感ずる人は多く、呑み込むときの滑りが悪いためと考えられています。
Hさんの場合、検査はまずエックス線による撮影から行いました。
その画像には、がんの進展と思われる食道内腔に狭窄が認められたので、次に食道内視鏡による検査を行いました。
食道内視鏡とは、胃の内視鏡検査いわゆる胃カメラと同様のもので、カメラを呑み込んで行います。すると、ひと目でわかるがんが発見されたのです。
その画像の特徴とは、
「食道内腔に向かって、がんが大きく隆起していました。大きさは約7センチで、食道がんとしては大きなほうです」(森山さん)
食道がんにはさまざまな型がありますが、進行がんではこのように隆起している型が多いといいます。
「隆起した部分もゴツゴツとしていかにも不整形で、これもがんの特徴をよく表しています」(森山さん)
粘膜の色も、がんの存在を見極めるうえで重要なポイントです。
「正常な食道粘膜は、ツルっとしてなめらかであり、きれいなピンク色をしています。しかし、進行したがんが存在すると、周囲の粘膜が赤っぽくなり、この画像でも現われているように、隆起したがんの部分も出血した痕跡が、しばしば見られるようになります」(森山さん)
このように進行した食道がんは、内視鏡の画像だけでも、がんであることは明確なのですが、確定診断は内視鏡により組織を採取し、顕微鏡で組織型を覗く病理検査によって行います。
矢印の先の付近までがんが広がっている
初期の食道がんを見つける方法
Hさんはこの後、CT検査を受け、食道周囲や全身への転移が認められなかったので、手術を受けました。
食道の壁はあまり厚くなく、重要な血管や臓器、組織が隣接しており、粘膜を越えるがんになると、これらへの臓器や組織への浸潤・転移する率が高くなるので、その有無を調べる検査は必須になるのです。
「とくに縦隔という左右の肺を分ける壁に転移することが多いので、この部分をCTやPETで調べるのが一般的です」(森山さん)
なお、進行した食道がんでは、がんの隆起により食道内腔が狭まっている、あるいはほとんど塞がっていることがあり、それより奥に食道内視鏡の先端を進められないケースがあります。手前からがんを眺める状態です。
がんの存在を確認するにはそれでよいのですが、治療の方針を決めるための検査としては不十分になります。
「そういったときにはCTやMRI、エックス線検査を組み合わせて、がんの全体像を捉えるのです」(森山さん)
なお、食道内視鏡は初期の食道がんを見つける検査としても、よく使われます。しかし初期の食道がんでは、隆起やひと目でわかる特徴的な発色は、ほとんどありません。では、どのようにして見つけるのでしょうか?
「ルゴール液といって青いヨード液をがんと疑わしい部分に散布して染色します。するとがんの部分は染まらずに白く残るのです。この方法により、初期の食道がんはかなり発見しやすくなりました」(森山さん)
最近の食道内視鏡は、ファイバーの径が大分細くなってきているので、呑み込むときの苦痛もかなり緩和されています。
同じカテゴリーの最新記事
- 子宮体がんMRI検査 影が淡く、丸くなければ、子宮体がんと判別する
- 膵島腫瘍(膵内分泌腫瘍)CT検査 影の白っぽいのが、膵がんと見分けるポイント
- 肝がん CT&肝血管造影検査 腫瘍内部の色調が濃淡入り混じっているのが、がんの目安
- 尿管がん エックス線&CT造影検査 尿管が太く、白い影が出なければ、がんを疑う
- 腎盂がん CT&エックス線造影検査 造影剤を入れたCT検査で黒い影があればがんを疑う
- 膀胱がん CT検査 膀胱壁の輪郭の滑らかさからがんの浸潤を見分ける
- 多発性骨髄腫 CT検査 黒い影の輪郭がギザギザなのが骨髄腫の特徴
- 類上皮血管内皮腫 CT検査 骨髄の黒さの濃淡でがんを見分ける
- 悪性線維組織球腫 CT検査 骨の位置がずれているのは巨大な腫瘍に押された証し
- 卵巣がん(境界悪性腫瘍)CT検査 卵巣や充実成分の大きさを良性・悪性判別の目安にする