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脳腫瘍・MRI
いくつかの検査画像を組み合わせて、腫瘍の実像を明らかにすることがカギ
もりやま のりゆき
1947年生まれ。1973年、千葉大学医学部卒業。米国メイヨークリニック客員医師等を経て、89年、国立がん研究センター放射線診断部医長、98年、同中央病院放射線診断部部長で、現在に至る。ヘリカルスキャンX線CT装置の開発で通商産業大臣賞受賞、高松宮妃癌研究基金学術賞受賞。専門は腹部画像診断
患者プロフィール
59歳女性。数カ月前から歩くときに、今まで体験したことのない違和感を感ずるようになった。足腰の疲れだろうと放置していたが、徐々に症状が強くなり、歩くことが困難になった。近所の病院の診断で脳腫瘍が見つかり、国立がん研究センターを紹介された。再検査で、3センチ大の小脳髄膜腫であることがわかった
脳腫瘍が見つかる2つのパターン
髄膜腫は、脳を包んでいる髄膜から発生する代表的な脳腫瘍で、全体の20数パーセントを占めています。発症のピークは、40代、50代、女性は男性の1.7倍の発生頻度があります。
「髄膜腫のうち95パーセントは良性ですが、良性か悪性かに関わらず、腫瘍の増殖は脳を圧迫し、日常生活を送るうえでの障害をもたらします。したがって、まずはどの部位にどれくらいの大きさの腫瘍があり、それがどんな種類の脳腫瘍かを明らかにしなければなりません」(森山さん)
脳腫瘍の種類によっては、急速に増殖するものがあります。種類の特定は、腫瘍の大きさや発生部位の特定と同様、大変に重要です。
脳腫瘍の検査では、CTやMRIがよく用いられており、一般にMRIの画像のほうがCTに比べてより鮮明です。
脳腫瘍の見つかるパターンは大きく分けて2つあります。
1つは、脳ドックで見つかるパターンです。脳ドックの普及にともない、無症状のときに、すなわち腫瘍がさほど大きくない時点で見つかるケースが増えてきました。この場合、定期検査で腫瘍の様子を見ながら、治療のタイミングをはかることが可能です。
もう1つは、この59歳の女性のように、なんらかの症状が現れたことを機に受診し、見つかるパターンです。
症状は、腫瘍の増殖によって、脳のどの部位が圧迫されるかによって、違ってきます。具体的には、視野が狭くなる、聴覚が鈍るといった「感覚障害」、手や足が動かしにくくなるといった「運動障害」、話しづらくなるといった「言語障害」などがあります。
「この女性の脳腫瘍は、小脳にできた小脳髄膜腫です。膝を上げ、踵で着地、爪先に重心を移動させてから地面を蹴るというような歩くときの一連の動作(協調作業)がスムーズに行えなくなるというのが典型的な症状です。傍から見れば踊っているようにも見えるので、昔は舞踏病と言われる場合もありました」(森山さん)
一目瞭然の白い影
この女性の小脳髄膜腫は3センチ大で、さほど大きくはありませんでした。とはいっても、MRI画像で見ると、その存在は一目瞭然です。添えてあるイラストのようにスライスしたものが、写真(1)の検査画像です。
上部が大脳、下部が小脳です。その境目を横断するようにギザギザの線が見えますが、これはテントと言います(これより上にある腫瘍をテント上腫瘍、下にある腫瘍をテント下腫瘍という言い方をする場合もあります)。小脳の部分、中央よりやや左側の、矢印で囲んである円形の白い部分が髄膜腫です。
(1) 小脳髄膜腫のMRIによる検査画像。
上部が大脳、下部は小脳
(2) (1)の検査画像の断面写真
別の断面写真(2)を見ると、さらに腫瘍の存在する位置がイメージできるようになります。
ただ治療方針を決めるにあたっては、MRIの検査写真だけでは不十分です。造影剤を注入してより鮮明なスライス画像を得たり、別の種類の検査をするなどして、腫瘍に関するさらなる情報を収集します。
(3)のX線血管造影写真は、腫瘍がどのように血管を取り込んでいるのか、を明らかにする目的で撮影されています。
「矢印で囲まれた、白くぼんやりとした影が腫瘍で、栄養補給をする動脈から血管を取り込んでいる様子がよくわかります」
このように、いくつかの検査画像を組み合わせて腫瘍の実像を明らかにし、今後の治療方針を決定するのです。 脳腫瘍の治療としては、3センチ以下で個数が少なければ、ガンマナイフ(放射線治療機器の1つ)、その適応がなければ、開頭手術で腫瘍を摘出する方法がとられます。
(3) X線血管造影写真
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