編集部の本棚 2016/3Q
患者さんとご家族のための子宮頸がん 子宮体がん 卵巣がん治療ガイドライン第2版
日本婦人科腫瘍学会編集 金原出版 2,500円(税別)
患者さんと家族向けの治療ガイドラインとしては、日本婦人科腫瘍学会が初版を2010年に上梓しており、本誌はその第2版。2010年以降、様々な新しいエビデンス(科学的根拠)が出てきたことから、それらの内容を盛り込む形で今回改訂の運びとなった。
具体的な変更点としては、子宮頸がんのページでは、検診結果の見方とその後の検査項目を新たに追加。子宮体がんでは、標準治療の1つとして腹腔鏡下手術を紹介し、さらに子宮肉腫と絨毛性疾患の項目が加わった。また、卵巣がんのページでは、13年に日本で初めて承認された分子標的薬「アバスチン」の項目を新設するなど、各がん種について最新の知見を盛り込む形で再編集されている。
オールカラーで、図やイラストを多用しており、わかりやすくまとめられている本誌。今回の改訂では婦人科がんの患者会「カトレアの森」からの意見も聞き、編集されているという。治療ガイドラインと聞くと、難解なイメージがあるが、本誌は決してそうではなく、患者さんや家族が手に取りやすい1冊となっている。(白)
振り回されない「がん」医療 病理医だけが知っている〝本当〟の診断最前線
福嶋敬宜著 ワニブックス 1,100円(税別)
著者は、自治医科大学医学部教授で、病理医である福嶋敬宜さん。「病理」と聞いても、ピンと来る人は少ないかもしれないが、病理医とは、全身の臓器、組織、細胞などを診て、最終診断を下す、いわば「医療の審判」「司令塔」とも言うべき重要な役割を担う専門医を指す。
本書は、その病理医の視点から「がん医療」について記したもの。あまり知られていないがんの病理診断の現状や、検診にまつわる話題、さらには医師という〝珍人種〟とうまくつきあうコツ、納得の医療を選択するためにはどうしたら良いのかといった内容が、具体例を交えて綴られている。
病理医の視点から書かれた「がんの診断プロセス」については、その舞台裏が記されており興味深い。「がん」と診断されても、個々によってその顔つきは様々であり、病理診断の結果も含め、自分のがんについての状況をまずはしっかりと把握することが重要だと、著者は指摘する。溢れかえる医療情報の中で、振り回されずに納得できる医療を受けるためにはどうしたらよいか。本書がその一助となればと思う。(白)
今日が人生最後の日だと思って生きなさい
小澤竹俊著 アスコム 1,000円(税別)
著者は、在宅医療を専門とした「めぐみ在宅クリニック」院長の小澤竹俊さん。これまで、2,800人以上もの患者さんの看取りに関わってきた著者が考える「後悔のない最後を迎える」ための生き方とは? 本書では、これまで看取ってきた患者さん・家族の例から「人はどう生きればいいか」「どういう死が満足できるものなのか」を説いている。
「今日が人生最後の日だとしたら、どう生きたいか」。著者はあえてこのフレーズをタイトルにしたと語る。「今日が人生最後」だと思ったときにようやくわかる、自分にとって1番大切なもの、それこそが死を目前に控えたときに心を支えてくれるものであり、1度読者にも想像して欲しかったからだと、その理由を述べる。
患者さん、家族にとって「今日1日の大切さ」を教えてくれるとともに、元気な人にとっても「気づき」を与えてくれる本書。医療関係者、介護に関わる人にも、手にとってもらいたい1冊となっている。(白)