編集部の本棚 2017/3Q

文●「がんサポート」編集部
発行:2017年7月
更新:2017年7月

  

患者さん・ご家族・一般市民のための膵がん診療ガイドライン2016の解説
編集:日本膵臓学会膵癌診療ガイドライン改訂委員会
発行:金原出版株式会社 1,800円(税別)

医師向けの『膵癌診療ガイドライン』が2016年に改訂されたことを受け、患者さんや家族向けに、ガイドラインの内容をわかりやすく解説されたのが本書。「膵がんとは」「膵がんの診断法」「膵がんの治療法」と、大きく項目が分かれおり、それぞれについて専門医が執筆を担当。難しい内容を平易な言葉で解説し、図やイラストも多用しているため、理解が進む内容となっている。

患者さんや家族にとって、とくに気になるのが治療法の項目だろう。本書では、治療の流れについてフローチャート式に掲載されており、自分が今どの治療を受けているのか、俯瞰して見ることができる。また、それぞれ各項目はQ&A方式で記載されており、例えば手術に関しては、日本ではまだ少ない膵がんに対する内視鏡手術について、利点とリスクが書かれており、腹腔鏡下手術を検討している人にとってはぜひ読んでおきたいところ。また、化学療法に関しては、切除不能な局所進行と遠隔転移とに分けて、推奨される1次治療について書かれており、気をつけるべき副作用についても記載されている。

一般的に治療が難しいとされる膵がんだが、病気を克服するためには、医療者だけでなく、患者さんや家族も一体となって治療に臨む必要がある。本書を通じて、自身の治療法への理解につなげて頂きたい。(白)

北海道でがんとともに生きる
編集:大島寿美子
発行:寿郎社 2,000円(税別)

本書は、北海道で暮らし、主に北海道で治療を受けたがん患者さん28人が、実名で語る闘病記録である。年齢、がん種、性別、置かれている状況など、28人それぞれ違う中、「告知のショック」「治療のつらさ」「手術への不安」「副作用の苦しみ」「前向きに生きる秘訣」など、自身の体験を自らの言葉で綴っている体験記だ。

2016年7月、胸の異変に気づき、病院に行ったところ乳がんと診断された高橋千奈美さん。ステージ0の早期発見で、医師からは手術を勧められたものの、治療法に納得がいかずにいた。「何が1番大切なのか?」。自分自身への問いに対して出た答えは……「家族」。手術を決断した瞬間だった。

例え同じがん種、ステージだったとしても、その人がどのような体験をするのか、その体験をどのように記憶し、その後どう意味付けするかは、個人個人によって異なってくる。だからこそ、本書のように、一人称で語られている生身の体験は、読む側に〝生きる力〟を感じさせてくれるのだろう。

2人に1人ががんに罹る時代。決して珍しくない病気になったからこそ、こうした複数の人の体験記は、貴重な価値を持つ。(白)

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