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FP黒田尚子のがんとライフプラン 59
「医療費控除」を申告する場合、民間保険の給付金の扱いは?
がん患者さんからのご質問が多い制度に「医療費控除」があります。医療費控除は、1年間に支払った医療費が一定額を超える場合、確定申告することで支払った税金が戻ってくる制度のこと。がん患者さんならご存じの方も多いでしょう。
ただ、確定申告して医療費控除を受ける場合、かかった医療費の額から、差し引かなければならない給付金については、よくわからないという声が多く聞かれます。
そこで今回は、医療費控除と民間保険の給付金について、ポイントをまとめてみました。
民間保険の給付金を受け取った場合の税金は?
医療保険やがん保険などに加入している人が、入院や手術など所定の要件を満たした場合、入院給付金や手術給付金などを受け取ることができます。
基本的に、個人が、不慮の事故や病気によって生命保険から受け取った入院給付金等は、金額にかかわらず非課税です。つまり、受け取ったときに税金はかかりません。申告等も不要です。
■おもな非課税となる給付金・保険金の例
●入院給付金●手術給付金●通院給付金●疾病(災害)療養給付金●障害給付金(保険金)
●介護保険金(一時金、年金)●高度障害保険金(給付金)●がん診断給付金
●特定疾病(三大疾病)保険金●先進医療給付金●リビング・ニーズ特約保険金
※リビング・ニーズ特約保険金など、非課税で受け取った給付金・保険金が相続財産として引き継がれる場合、相続税の課税対象となる
医療費控除を受ける場合に差し引く給付金は?
しかし、確定申告で医療費控除を受ける場合、「年間に支払った医療費」から「補てんされた保険金など」を差し引く必要があります。
要するに、純粋にかかった自己負担分のみが対象となるということです。
この際に、差し引くべきものと差し引かなくても良いものがあり、図表の通りになっています(図表参照)。
民間保険の給付金以外に、同じ健康保険からの給付であっても、高額療養費は差し引かなくてはいけませんが、所得補償である傷病手当金は差し引かなくてもよい点にご注意を。
そして、さらに注意すべき点が1つあります。保険金などで補填される金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引くことになっています。
例えば、医療費の総額が100万円で、このうち、がん治療にかかった医療費が20万円、それ以外の医療費が80万円だったとしましょう。この場合、がん診断給付金100万円を受け取ったとしても、差し引くのはがん治療にかかった分だけですから20万円のみです。引ききれない金額が生じても、他の医療費から差し引かなくてもよいのです。これを勘違いして、「医療費控除を申告したいけれど、がん診断給付金を多額に受け取ったので、できない」と思い込んでいる患者さんが少なくありません。
※医療費控除が対象になる費用については、FP黒田尚子のがんとライフプラン 11「医療費が10万円を超えたら還付が受けられる!「医療費控除」活用法」(2015年2月)をご参照ください。
医療費を負担した時期と給付金をもらった時期が異なる場合は?
さらに、がん患者さんからのご質問で多いのは、医療費を支払った時期と給付金を受け取った時期が異なるケースについてです。
例えば、12月に医療費を支払って、給付金を受け取ったのが翌年1月以降だった場合はどうすればよいでしょうか?
このように、医療費を補てんする保険金等の金額が、医療費を支払った年分の確定申告までに確定していない場合、補てんされる保険金等の見込額に基づいて計算しなければなりません。
つまり、故意に給付金の受取り時期をずらしても意味がないということです。
そして、受け取った保険金等の確定額と当初の見込額とが異なる場合、確定申告の期限前であれば「訂正申告」、期限後であれば「修正申告(*1)」または「更正の請求(*2)」の手続きによって申告を修正する必要があることもお忘れなく。
*1:修正申告=税額が少なかった場合あるいは還付が多かった場合の修正の手続き
*2:更正の請求=税額が多かった場合あるいは還付が少なかった場合の修正の手続きをすれば、所得税とともに住民税も安くなるというメリットがあります
今月のワンポイント がんを保障する民間保険の給付金もさまざまなものがあります。基本的には、医療費として補てんされた金額が対象になるのですが、不明な場合は、保険会社等に確認してみてください。受け取れる保険金額の概算についても同様です。