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大腸がんの最新標準治療
最良の医療が提供され、最良の治療が受けられる『ガイドライン』が出そろった

監修:水沼信之 がん研有明病院化学療法科副部長
取材・文:菊池憲一
発行:2006年4月
更新:2014年1月

  
大矢雅敏さん がん研有明病院
化学療法科副部長の
水沼信之さん

みずぬま のぶゆき
1984年東京慈恵会医科大学卒業。
90年同大学第3内科学教室助手。
93年米国ハーバード大学医学部、ダナファーバーがん研究所研究員、
97年がん研究会府属病院化学療法科復帰後、03年医局長、ATC 医長を経て、
06年1月より現職。専攻は臨床腫瘍学


大腸がんの最新の標準的な化学療法は、現時点で5通り

日本の大腸がん研究者らを構成メンバーとする大腸癌研究会が「大腸癌治療ガイドライン」を作成し、その普及に乗り出した。

2005年夏に、医師向けの『大腸癌治療ガイドライン』を発表し、今年1月には患者さん向けの『大腸癌治療ガイドラインの解説』を出版した。この『大腸癌治療ガイドライン』には現時点での日本の最良の医療がまとめられている。医師は、この標準治療をもとに、患者さんにとって最良の医療を説明し、提供する義務があり、患者さんは最良の治療を知り、受ける権利を持っている。

大腸がんはリンパ節や肝臓などに転移した場合や再発した場合、その予後は厳しいとされてきた。しかし、最近では化学療法の進歩で、その治療効果は飛躍的に向上している。転移・再発した大腸がんの化学療法は、大腸がんの標準治療の中で、最も治療効果が向上した分野である。

そうした動きのなかで、がん研有明病院ではガイドラインが発表される以前から欧米を見習い、最新の標準治療に取り組んできた。現在、転移・再発した大腸がんに対して、5通りの化学療法を行っている。

「現在、転移・再発した大腸がんの化学療法の標準治療は5通りあります。このうちのIFL(アイエフエル・後述3)は最近は使われなくなっていますが、患者さんにはこれらの5通りの化学療法をすべて説明し、その治療内容を理解していただくようにしています。そして、患者さんの全身状態などを考慮し、納得してもらったうえで化学療法を選びます」とがん研有明病院化学療法科副部長の水沼信之さんは語る。それらを記してみよう。

(1) FOLFOX(フォルフォックス)

5-FU(一般名フルオロウラシル、持続点滴)とアイソボリン(一般名レボホリナート=点滴)、エルプラット(一般名オキサリプラチン=点滴)の3剤を併用する治療法。

(2) FOLFIRI(フォルフィリ)

5-FU(持続点滴)とアイソボリン(点滴)、カンプト、またはトポテシン(一般名イリノテカン=点滴)の3剤を併用する治療法。

(3) IFL(アイエフエル)

5-FU(静脈内注射)とアイソボリン(点滴)、カンプト、またはトポテシン(点滴)の3剤を併用する治療法。

(4) 5-FU+アイソボリン

5-FU(静脈内注射)とアイソボリン(点滴)を併用する治療法。

(5) UFT+ロイコボリン(ホリナート・テガフール・ウラシル療法)

UFT(一般名テガフール・ウラシル=経口剤)とロイコボリン(一般名ホリナートカルシウム=経口剤)を併用する治療法。(4)の経口療法として開発されたもの。

また、手術後の再発抑制を目的にした術後補助化学療法では5-FU(静脈内注射)とアイソボリン(点滴)の併用療法が標準的な化学療法として確立されている。治療対象は3期の結腸がんで手術を受けた場合だ。さらに(5)のUFT(経口剤)とロイコボリン(経口剤)の併用も同等の治療効果が報告されている。

[大腸がん化学療法一覧表]

「日本で大腸がんに承認されている薬剤はこれだけあり、患者さんの状態などにより使い分けられています。とくに理由がない場合は標準治療が行われるべき」と水沼さんは語っている

治療法及び薬剤名
(製剤は商品名を記しています)
治療
スケジュール
がんが
半分以下に
小さくなった
割合(
特に
注意が
必要な
副作用
欧米でも
承認
されて
いるもの
「大腸癌治療ガイドライン」
で推奨されているもの
備考
5-FU 注射:週1回投与や、1日1回を数日間投与する など
————
経口:1日1~3回
11.0%
(注射)
下痢
骨髄抑制
注射剤/経口剤/坐剤大腸がん化学療法の中心的薬剤。単剤で使用されるより他の薬剤と併用されることが多い
5-DFUR
(フルツロン)
1日3~4回 9.20% 下痢
骨髄抑制
× 経口剤
がん細胞での5-FU濃度がより高くなるように考えられた薬剤
UFT
(ユーエフティ)
1日2~3回 18.30% 下痢
骨髄抑制

欧州でのみ承認
経口剤
単独で使用されるほか、ロイコボリン錠と併用されることも多い
TS-1
(ティーエスワン)
1日2回、28日間服用し、14日休薬 32.60% 下痢
骨髄抑制
× 経口剤
CPT-11
(トポテシン/カンプト)
週1回を3~4週投与し、2週休薬
または2週に1回を
2~3回投与し、
3週休薬
12.5~23.0% 下痢
骨髄抑制

(5-FU+アイソボリンとの併用)
注射剤
単独で使用されるほか、アイソボリン、5-FUと併用されることも多い
5-FU+l-LV
(5-FU+アイソボリン)
週1回、6週投与し、2週休薬または2週に1回投与 30.0%
(急速静注)
17.0%~37.0%
(持続点滴)
下痢
骨髄抑制
注射剤
世界各国で行われている療法で、大腸がんの標準的な治療法の1つ
FOLFOX
〈フォルフォックス〉
(5-FU+アイソボリン+エルプラット)
週に2日間投与し、2週ごとに繰り返す 約50% 骨髄抑制
末梢神経症状
注射剤
世界各国で行われている療法で、大腸がんの標準的な治療法の1つ
FOLFIRI
〈フォルフィリ〉
(5-FU+アイソボリン+トポテシン/カンプト)
週に2日間投与し、2週ごとに繰り返す 約50% 下痢
骨髄抑制
注射剤
世界各国で行われている療法で、大腸がんの標準的な治療法の1つ
UFT+ロイコボリン 1日3回、28日間服用し、7日休薬 36.40% 下痢
骨髄抑制
肝機能障害

欧州でのみ承認
経口剤
アイソボリン+5-FUの経口療法として開発された治療法

このデータはがん研有明病院化学療法科の水沼信之さんのご協力により作成、掲載しました
注)ここに示した数値は、個別に行われた試験で確認されたものですので、単純に比較することはできません。あくまでも参考データとしてご覧ください


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