病期1Aの腺がん。縮小手術は適しているか

回答者:坪井 正博
神奈川県立がんセンター 呼吸器外科
発行:2011年3月
更新:2019年8月

  

父(76歳)のことでご相談です。先日、父は非小細胞肺がんの腺がんと診断されました。病期は1Aと早期で、不幸中の幸いでした。主治医からは手術を行うと言われておりますが、最近インターネットなどで調べてみると、肺がんの縮小手術で、がんの周囲だけを切除する「部分切除」というものがあることを知りました。年齢のこともあり、手術後の呼吸機能のことを考えると、できるだけ切除する範囲を小さくしたいという思いはあります。ただその一方で、切除範囲を小さくすることで、再発する可能性が高まるのでは、とも心配しています。父に縮小手術を行うのは適しているのでしょうか。合わせて、縮小手術で考えられるメリット・デメリットも教えて下さい。

(長崎県 女性 43歳)

A 術後早期の回復が期待されるが、再発の可能性も

現在、肺がんの手術は「肺葉切除」が基本となっています。葉というのは、解剖学的な単位で、右肺は上葉、中葉、下葉の3葉に、左肺は上葉、下葉の2葉にわかれていて、がんが含まれている葉ごとに、手術で摘出するのが標準的な手術となります。

その一方で、最近では葉を枝分かれしている気管支、血管をもとにさらに狭い単位の区域でわけて、その区域ごとに切除する「区域切除」、またさらに小さく、がんの部分を含めて肺の一部を切除する「部分切除」も出てきました。

今回ご相談者の質問の部分切除ですが、メリットは、やはり葉切除と比べて切除範囲が小さいので、傷が小さくてすみますし、術後早期に呼吸機能が回復する点です。またもし別の場所に新しい肺がんができた場合でも、最初の手術が部分切除で終わっていれば、残された肺の機能が再手術に耐えられる、標準的な手術を受けられる可能性があると考えられます。

一方、デメリットもあります。それは、局所再発、すなわち切った所のそばからの再発の問題です。がんの性質にもよりますが、腫瘍の大きさが3センチ以下で部分切除した場合、再発率が10パーセント程度起こるとされています。

以上が部分切除によるメリット、デメリットですが、術後の呼吸機能は、もちろん大きく切除したほうが一時的には落ちますが、術後のリハビリ次第で、6カ月から1年程度でもとの状態近くにまでもどすことは可能です。ですので、術後のリハビリを頑張るというご本人の強い意志があるのなら、無用な局所再発を防ぐという意味から、目に見えるがんを完全に取り切る、つまり標準的な葉手術を行ったほうがいいかと思います。

ただし、最近ではがんのタイプによって再発を起こしにくいものがあることがわかってきました。とくに大きさが2センチ以下で、すりガラス様の影を伴うがんであれば、そういう可能性があります。お父様がそのようなおとなしいタイプのがんであるなら、場合によっては、部分切除あるいは区域切除で十分に根治が期待できると思います。以上を踏まえ、主治医の先生と今1度ご相談されてみてはいかがでしょうか。

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