術後の後遺症が不安。1期で手術必要か
食道がんの1期と診断され、手術が必要と言われました。ですが、食道の手術をすると、声が嗄れたり、食べ物の通りが悪くなったりすると聞いて、不安でなりません。1期ということなのですが、本当に手術をしなければならないのでしょうか。手術のほかに方法はないのでしょうか。
(福島県 男性 58歳)
A 完治を目指すには手術が確実
1期であれば、手術で約90パーセント治りますので、手術をおすすめします。日本での食道がんの手術の歴史は長く、治療成績も良いです。がんを切除して、確実に治す技術に加え、副作用や合併症に対する方法が確立しているのです。
化学放射線療法を選択する場合もありますが、消えるだろうと考えられていた病変が残ってしまうなど手術よりも確実性が劣ります。
また、食道は肺や心臓など、命にかかわる臓器のすぐ近くにあります。放射線治療の技術が進んでいるとはいえ、これらの臓器にも放射線が当たってしまうことがあり、後々になって後遺症が起こる問題があるため、第1選択にはしていません。
手術後、声嗄れなどの症状は反回神経の麻痺によって起こります。反回神経は、声帯の動きを司っている神経です。反回神経の周りにリンパ節と脂肪組織があり、この神経を保護している状態になっています。
しかし、リンパ節郭清を行うことで反回神経を保護するものがなくなって、痛んでしまうために麻痺が起こり、声が嗄れるなどの症状が出るのです。ですがこういった症状は一時的で、3カ月くらいすると回復します。
また、手術で吻合した部分が狭くなって食べ物の通りが悪くなる場合がありますが、狭くなった部分を内視鏡で広げれば通りはよくなります。
また、もともと食道は喉元に食べ物が入ると蠕動運動が起こり、ベルトコンベアのように胃まで食べたものが運ばれます。しかし手術で胃を持ち上げて、がんとともに切除した部分を補うので、この蠕動運動がなくなってしまいます。そのため、食べ物が途中で滞るような感じがします。
したがって、なるべく柔らかいものを食べたり、よく噛んで小さくしてから飲み込んだり、ゆっくり食べるなどの工夫が必要です。肉など、口の中でなかなかばらけにくく、繊維の多いものが吻合部にひっかかる場合もあるので、注意が必要です。
手術をしたほとんどの患者さんにこうした嚥下障害が起こります。しかし個人差もありますが1カ月から遅くとも1年くらいで普通に食事ができるようになります。