3つの治療法を提示されたが迷っている
70歳の父のことで相談します。黄疸が出て入院し、検査を受けた結果、膵頭部がんと診断されました。腫瘍の大きさは2センチで、周囲の血管にも浸潤しています。また、リンパ節への転移の可能性もあると言われました。手術をしても切除しきれない可能性が高いため、手術は勧められないとも言われました。治療法として、(1)ジェムザール単剤、(2)ジェムザールと放射線の併用、(3)TS-1(一般名テガフール・ギメラシル・オテラシル)とブリプラチン(またはランダ、一般名シスプラチン)の併用の3つの方法を提示されましたが、とても迷っています。どの治療方法が最善なのでしょうか。
(神奈川県 女性 43歳)
A 局所進行型か遠隔転移型かで第1選択は異なる
切除が困難な膵がんは、明らかな転移がなくがんが膵臓にとどまっている局所進行型と、他の臓器に転移を認める遠隔転移型の2つに分類されます。局所進行型では放射線化学療法が、遠隔転移型では化学療法が一般的な治療方針となります。
局所進行膵がんに対する放射線化学療法で併用する抗がん剤は、5-FUが最も多く使われています。5-FUの代わりにジェムザールを使用することもあります。また、局所進行膵がんであっても、ジェムザール単剤の治療を行うこともあります。これは、ジェムザール単剤の治療が放射線化学療法と比較して副作用が少ないことがあり、また生存期間においても同等の成績が得られる可能性があるからです。
遠隔転移例に対しては、ジェムザール単剤による治療が第1選択とされています。しかし、ジェムザールの治療効果はいまだ十分とは言いがたく、更なる治療効果を目指して、いろいろな新しい抗がん剤の開発が行われており、その1つがTS-1です。そして、そのTS-1の効果を高めるためにシスプラチンを併用したものが、3番目に提示された治療法です。しかし、ジェムザール単剤と、TS-1とシスプラチンの併用療法のどちらが優れているのかは、現在のところ分かっていません。
ご相談者の場合、リンパ節に転移が疑われるとのことで、多少難しいところがありますが、がんが膵臓にとどまっているのなら、5-FUまたはジェムザール併用の放射線治療も可能ですし、ジェムザール単剤による治療も選択可能です。また新しい試みとして、TS-1とシスプラチンの併用療法を受けられることも選択肢の1つとなります。
どの治療が最善であるかは、現状ではお答えできるほど十分なデータはなく、どれも間違った選択ではありません。今後の治療に関しては、担当の先生とよく相談され、治療法を選択されてはいかがでしょうか。