胆嚢がんの手術後に転移。ジェムザール+TS-1の治療でよいか
2008年の6月、胆嚢がんの手術を受け、胆嚢、胆管、肝臓の一部、リンパ節などを切除しました。病期は3~4期でした。10月にMRI(核磁気共鳴画像法)、CT(コンピュータ断層撮影)の検査を受けると、門脈のリンパ節転移が判明しました。その後、12月から2009年の5月までジェムザール(一般名 塩酸ゲムシタビン)の治療を受け、今年5月末からジェムザール+TS-1(一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)の併用療法を受けることになりました。抗がん剤治療のこれまでの副作用は、自覚症状としては疲労感があります。また、手術を受けた2008年の6月から現在まで、背中が張る感じがして、痛みもあります。また、2009年の5月に、肝臓への転移が確認されました。手術痕(胆管と小腸を接続したところ)が腫れているとも言われています。腫瘍マーカーのCA19-9の主な経過は次のとおりです。
・2008年6月(手術前)……700U/ml
・2008年10月……3432U/ml
・2009年2月……1500U/ml
・2009年5月……2700U/ml
2009年5月にCA19-9の値が2700U/mlに急上昇し、とても心配です。ジェムザール+TS-1の治療でよいのでしょうか。
(神奈川県 男性 79歳)
A 副作用に気をつけながら、ジェムザール+TS-1で効果をみる場合も
胆嚢がんに対し、最も効果が期待されている薬はジェムザールで、世界中で多く使われています。TS-1はとくに日本で開発が進められている薬剤で、さまざまながんに効果があり、胆嚢がんに対する効果も期待されています。
今年の5月にアメリカで行われた国際学会(ASCO)で、抗がん剤投与を初めて受ける胆道がんの患者さん(1次治療)ではジェムザール単剤で治療するよりも、ジェムザールにランダまたはブリプラチン(一般名シスプラチン)という抗がん剤を加えたほうが治療成績がよいと報告されました。
この結果を受けて、ジェムザール+ランダ(またはブリプラチン)の2剤併用療法は、今後胆道がんで抗がん剤治療を初めて行う患者さんの標準治療になり、国際的に多用されるようになるでしょう。 しかし日本では、2009年7月現在、残念ながら、ランダ(またはブリプラチン)は胆嚢がんに対し、保険が適用されません。
また、抗がん剤治療は通常、投与を始めたばかりのころは効いていても、その効果は徐々に落ちていき、抗がん剤を投与してもいずれは病気が進行してしまいます。
今回のケースは、効果が最も期待されているジェムザールを初めに投与し、当初は腫瘍マーカーが低下して、効果がみられたという印象を持ちますが、今年5月の時点では、肝転移の出現も指摘されているようで、ジェムザールの効果は不十分であるようです。
また、治療の効果は腫瘍マーカーだけでなく、CTなどで腫瘍の大きさの推移をみていくことも重要です。
ジェムザールの効果が十分でない場合は、治療に用いる薬剤の組み合わせを変更する必要があります。ただ、胆嚢がんでこのような状況、つまり最初に選択した抗がん剤が効かなくなり、次の抗がん剤を選択する状況(2次治療)で、どのような組み合わせの薬剤が最適なのかはまだわかっていません。
先述のとおり、今年の5月にASCOという国際学会で最初の抗がん剤治療の方針が決まったばかりなのです。ただし日本では、ジェムザールをTS-1に切り替えて治療することが多く行われています。TS-1の1次治療での成績は比較的良好ですが、十分なデータはまだありません。また、2次治療での治療効果はよくわかっていません。しかし、TS-1は今後、1次、2次治療ともに期待されている薬剤です。
一方、ジェムザールの効果が少しでも残っている可能性がある場合は、ご相談者のように、ジェムザールとTS-1を併用して治療効果をみていく場合もあります。ただ、ジェムザールとTS-1を同時に用いる方法は、どちらか1剤のみを使う場合よりも副作用も増大する可能性があるため、副作用に注意しながら治療を進める必要があります。また、副作用がきつくなった場合などには、TS-1だけの治療にすることも1つの方法として考えられます。