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肝っ玉弁護士がんのトラブル解決します 14
がんの治療で残業が減ったら役職手当をカットすると言われた。適法か?
多彩な弁護士活動の中でも家族、相続などの問題を得意とする。2003年より「女性と仕事の未来館」館長。2児の母。2005年男女共同参画社会作り功労者内閣総理大臣表彰を受賞。『子宮癌のおかげです』(工作舎)など著書多数。
渥美雅子法律事務所 TEL:043-224-2624
乳がんで治療中の会社員です。私は管理職ですが、治療が始まってからは、以前のように毎日終電近くまで働けず、有給休暇を取ることも増えました。ところが先日、私の勤務時間が減ったことで同じ職場の管理職から不満が出ており、治療が終わるまで役職手当を引かせてほしいと上司に言われました。これは認められるのでしょうか。
(30代、女性)
違法。まずは労働基準監督署に相談を
あなたの会社の給与体系がどうなっているのか、また、管理職といっても具体的にどのようなポストにいるのかわかりませんので、一般論でしかお答えできませんが、その旨ご了解ください。
役職手当(管理職手当)というのは、実際には「みなし残業代」が含まれているかのような運用がなされていることが多々ありますが、法的にはあくまでも、その職務に対して支払われるものであって、残業をするかどうかとは関係がありません。ですから、残業しないことを理由に役職手当をカットするということは、法的には認められることではありません。しかも、その理由が病気の治療であるならなおさらです。
産休や育休を取ったことによって不利益な扱いを受けたという話はよく聞きますが、これも違法です。ましてや、年次有給休暇を取得しての治療においておや、です。
あなたががんの治療中であることを知りながら、同僚からそのような文句が出るとは、ずいぶんひどい会社だと思いますし、上司が同僚の不満を受け入れて、あなたに役職手当のカットを迫ってくるというのも、常識から逸脱しているように思います。どうぞ近くの労働基準監督署に申し出てください。そのような扱い、そのような会社の体質について、それなりの是正措置をしてくれるはずです。
これはうがった見方かもしれませんが、会社側はあなたを体よく降格させるか、退職させようと仕向けているのではありませんか。同僚からの苦情にかこつけて、会社が嫌がらせをしているような気もします。労働基準監督署に申し出て問題が解決するならよし、何となくウヤムヤにされそうな感じなら、場合によっては「個別労働関係紛争の解決促進に関する法律」に基づく紛争調整委員会へのあっせんの申立や、「労働審判法」に基づく裁判所への労働審判の申立も考えたほうがいいかもしれません。そのことも併せて、まずは労働基準監督署にご相談ください。
一方、もし、あなたの会社に産業医がいるなら、その人からあなたの病状と勤務体制について、会社にアドバイスをしてもらうのもいいかと思います。産業医がいないなら、主治医に詳しい診断書を書いてもらって、それをあなた自身が上司に説明してもいいでしょう。
周囲の人に病状や治療方法、治療の見込みをなるべくオープンにして、上司、同僚、部下などを味方につけるようお勧めします。乳がんや子宮がんなどの病気を 男性の上司に説明するのは恥ずかしい気もするでしょうが、そこを「えいやっ」と飛び越えて、恥も外聞もなく話すと、妙に説得力があるものです。