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悪心・嘔吐から骨粗鬆症まで、やっかいな副作用の乗り切り方
抗がん剤、ホルモン剤治療の副作用と対策

監修:田村和夫 福岡大学病院腫瘍・血液・感染症内科部長
発行:2008年3月
更新:2019年8月

  

田村和夫さん 福岡大学病院
腫瘍・血液・感染症内科部長の
田村和夫さん

乳がんの治療では抗がん剤、ホルモン剤による治療が欠かせない。しかし、この抗がん剤治療、ホルモン治療を効果的に生かすためには、副作用を上手くコントロールする必要がある。その副作用対策の第一人者である福岡大学病院教授の田村和夫さんにそのコツを聞く。

悪心・嘔吐、食欲不振、そして脱毛

乳がんは他のがんに比べると、抗がん剤やホルモン剤がよく効く。反面、これらの治療にはやっかいな副作用もつきまとう。

実際に乳がん治療には、どんな副作用があり、どのような措置が講じられるのか。また患者はそうした副作用にどのように向かい合えばいいのだろうか。まずは抗がん剤治療によって生じる副作用から見ていこう。

「乳がん治療で抗がん剤を使用した場合の副作用としてもっとも一般的なのは悪心・嘔吐、食欲不振、それに脱毛など。他のがん治療にも起こる副作用ですが、いずれも侮ることのできないやっかいなものです」

と、語るのは、がん治療の副作用対策にくわしい福岡大学病院腫瘍・血液・感染症内科部長の田村和夫さんである。

そのなかでも、ほとんどの乳がん患者が経験しているのが悪心・嘔吐、食欲不振などの消化器症状で、これらは乳がん治療の場合には、アントラサイクリン系の抗がん剤、アドリアシン(一般名ドキソルビシン)やファルモルビシン(一般名エピルビシン)、さらにエンドキサン(一般名シクロホスファミド)を大量に使用した場合に、とくに顕著に現われる。もっともひとことで悪心・嘔吐といっても大きくは治療後24時間以内に現われる急性症状と、その後に起こる遅発性症状に分かれており、それぞれ対策は違っている。

「かつては急性の嘔吐に対しては、プリンペラン(一般名メトクロプラミド)、ステロイド剤くらいしか有効な対策はありませんでした。しかし現在では、5-HT3受容体拮抗剤とステロイド剤を併用することで急性の悪心・嘔吐はかなりコントロールが可能です。もっとも遅発性の場合はステロイド以外有効な薬剤が見当たらないのが実情です」 と、田村さんは指摘する。

[脱毛を起こしやすい抗がん剤]

薬剤 脱毛発現率(%)
パクリタキセル 87.7
ドセタキセル 78.4
エトポシド 75.7
エピルビシン 65.1
ドキソルビシン 61.6
イリノテカン 50.3
シクロホスファミド 24.3
メトトレキサート 14.0
ミトキサントロン 11.5
ピラルビシン 10.6
[抗がん剤で起こる悪心・嘔吐の種類]

種類 発現時期 特徴
急性嘔吐 投与後1~2時間 CTZ(化学受容体引金帯)や
消化管が伝達経路
遅延性嘔吐 投与後2~7日 抗がん剤代謝産物や
精神的因子が関与
予測性嘔吐 投与前24時間頃から 精神的因子が関与

難しい遅発性嘔吐の治療

現在は、急性の場合と同じようにステロイドと5-HT3受容体拮抗剤などが用いられているが、効果は今ひとつだという。ただアメリカではNK-1受容体拮抗剤の制吐剤、アプレピタントが承認されており、近い将来には日本でも使用が可能になる模様という。

乳がんに限らないが、患者のなかには心理的な要因から悪心・嘔吐などの消化器症状を呈するケースが少なくないという。

「以前、抗がん剤治療などで厳しい状況を経験した患者さんには、そのことが心理的なトラウマになっていることが少なくない。私の経験では4人に1人くらいは、治療を開始する前から不眠、気分が悪いなどの症状を呈します。治療でまた気分が悪くなるかもしれないと予測した結果、体調に異変が現われてしまうのです」(田村さん)

この場合には、制吐剤はまったく効果はなく、安定剤、睡眠剤、さらにカウンセリングなどの心理療法が行われることになる。

また食欲不振は体内の水分不足につながりやすく、投与した抗がん剤が排泄されず体内で高濃度に蓄積する危険もある。エンドキサンを大量に使用した場合には、その代謝産物が高濃度に膀胱に接触し、出血性の膀胱炎を引き起す危険もあるという。そこで、そうした危険のある患者には1日2リットルを目安に、積極的な水分摂取を進めていると田村さんはいう。ただ、脱毛に関しては、残念ながら薬剤などによる効果的な予防策はない。あらかじめ、かつらやウィッグ、バンダナなどの準備をしておくとよい。

[抗がん剤で起こる悪心・嘔吐の治療]

[治療方針]

高度 5-HT3受容体拮抗剤
デキサメタゾン
アプレピタント
1日目
1~3日目
1~3日目
中等度 5-HT3受容体拮抗剤
デキサメタゾン
(AC療法:アプレピタント)
1日目
1日目
1~3日目
軽度
ほとんどなし
デキサメタゾン
症状がでたときのみ使用
1日目
[精神・心理的悪心嘔吐の抑制]

制吐剤は無効
不安、抑うつを軽減
カウンセリング
行動療法
抗うつ剤
治療前にレモン水摂取
 味、においを工夫する
ベンゾジアゼピン系薬剤
 ジアゼパム、ロラゼパム
Kris et al. JCO24:2932, 2006


白血球(好中球)減少は注意すべき副作用

[骨髄抑制の割合]

CEF(n=79) DOC(n=78 合計(n=79)
好中球減少 40(50.6%) 24(30.8%) 43(54.4%)
発熱性好中球減少 15(19.8%) 3(3.8%) 17(21.5%)
貧血 0 0 0
血小板減少 0 0 0
CEF=エンドキサン、ファルモルビシン、5-FUの3剤併用療法
DOC=タキソテール
One patients receive only 1 cycle of CEF and no cycle of Docetaxel
H Iwata et al, Breast Cancer 12:99, 2005

この悪心・嘔吐と同じように、多くのがんの治療に共通する副作用が、抗がん剤の骨髄抑制にともなう白血球減少だ。

抗がん剤を用いた場合は、白血球の中でも、とくに好中球が減少することが多く、時には、それが重篤な感染症につながっていく危険もある。かつてはそうした危険を回避するために、好中球を増加させる作用を持つG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子:ノイトロジンなど)という薬剤が用いられていたこともあったが、現在はリスクに応じて使用するようになったと田村さんはいう。

「乳がん患者さんの場合は、重篤な感染症が生じるリスクはそれほど高いわけではありません。かつては好中球が減少すると、医師も過敏に反応していましたが、現在では、最近の研究結果から経口の抗菌剤で十分にコントロールが可能です」

ただ発熱以外に腹痛や咳などの症状がある場合は重篤な感染症に発展するリスクが高く、また白血球減少が顕著で、発熱の可能性が20パーセントを上回る治療が使用される場合はG-CSFが用いられるという。

[好中球減少に伴う発熱の定義とその原因]
図:好中球減少に伴う発熱の定義とその原因


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