ログインしていません!
  • rate
  • rate
  • rate

ICG蛍光法を導入した手術の安全性と根治性を高める取り組みも始まる

進化する大腸がんの腹腔鏡下手術 傷口1つで済む単孔式手術という方法も!

監修●渡邉 純 横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター外科講師
取材・文●伊波達也
(2017年7月)

「単孔式腹腔鏡下手術の1番のメリットは整容性にあります」と
語る渡邉 純さん

体に優しい術式として、広く行われるようになってきた大腸がんの腹腔鏡下手術。最近では技術がさらに進化し、傷口が1つで済む単孔式腹腔鏡下手術の取り組みも行われている。低侵襲化が進む大腸がんの腹腔鏡下手術の最新情報をレポートする。

適応範囲が広がっている腹腔鏡下手術

腹腔鏡下手術は、今や、体に優しい〝低侵襲(ていしんしゅう)手術〟の代名詞となった感がある。

腹腔鏡下手術は、臍(へそ)の辺りを3~4cm小さく切開し、筒状の器具を入れ、そこから体内の様子をモニタリングする腹腔鏡(カメラ)を挿入する。そして、炭酸ガスを注入し、腹部を膨らませスペースを作った後に、5~10㎜程度の穴を数カ所開けて、そこに設置した細い管の中に手術器具を挿入し、モニターに映し出された腹腔内の拡大画像を見ながら操作を行うというもの(図1)。

腹部を大きく切開する従来の開腹手術に比べて、傷口が小さくて済み、痛みが少なく出血量も少ない。また、開腹手術と異なり、直接手で腸を触らないので、術後の腸管運動の回復も早く、腸閉塞や傷口の感染症なども少ない、術後の回復も早いなど、患者にとってメリットが多いことが知られている。

大腸がん手術における腹腔鏡下手術は、日本では1990年代に導入され、行われるようになった。現在では、日本全国で行われる大腸がん手術のうち、平均で約6~7割は、腹腔鏡下で実施されているという。

「最初は大腸の良性疾患から始まり、がんに対しては、まず早期がんから行われ始め、安全性などを確認しながら、少しずつ適応を広げてきました。『大腸癌治療ガイドライン』では、以前は適応に関して、ステージ(病期)0~Ⅰ期という早期がんが『よい適応』と記されていましたが、その後、ステージに関する記述はなくなっています。

現在の考え方として、基本的にはチームおよび術者の経験や技量に応じて適応を決める必要があるとされていて、ガイドラインにおいても、例えば、ステージⅡ~Ⅲといったリンパ節郭清(かくせい)の難度が高い場合には、『個々の手術チームの習熟度を十分に考慮して適応を決定する』と書かれています」

大腸がんにおける腹腔鏡下手術の現状についてそう説明するのは、横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター外科講師の渡邉純さんだ。

同施設では年間300例ほどの腹腔鏡下手術を行い、渡邉さん自身は通算1,000例以上の経験を持つエキスパートだ。現在、同科では、大腸がん手術のほぼ90%以上(昨年は94%)を腹腔鏡下手術で行っているという。

「当科ではステージⅢ、Ⅳも含めて、腹腔鏡下手術の適応か否かを判断し、適応になれば腹腔鏡下で手術を行っています。例えば、肝転移のあるようなステージⅣの症例でも、大腸にある腫瘍を切除する場合に、適応と判断されれば腹腔鏡下で手術を行っています」

図1 大腸がんの腹腔鏡下手術の様子

安全性担保の1つの目安「技術認定医」

現在、大腸がんに対する腹腔鏡下手術は、保険適用になっているため、基本的には全国どこの施設でも手術を受けることが可能だ。しかし、標準治療であり、手技が確立している従来の開腹手術と比べると、術者の手技にばらつきがあるのは否めない。とくに、横行結腸や直腸に対する腹腔鏡下手術は難易度が高く、治療を受ける際には慎重に病院を選んで手術を受ける必要がある。

「現在、日本内視鏡外科学会では、腹腔鏡下手術の安全性を担保するために、消化器・一般外科領域や泌尿器科領域など、疾患ごとに技術認定制度を作り、内視鏡手術に関わる医師の技術力の底上げに取り組んでいます。この制度では、腹腔鏡下手術に関して一定の技術があり、かつ指導者としても技量のある人が技術認定医として認められているもので、大腸がんの分野では技術認定医の合格率は30%前後という結構な難関です。ちなみに当科では、現在私も含め3人の技術認定医が在籍し、治療に当たっています。

もちろん、技術認定医でないから技術が劣るというわけではありませんが、患者さんが施設を選ぶ際には、1つの目安になるかと思います。とくに横行結腸や直腸で腹腔鏡下手術を検討されている場合にはなおさらです」

技術認定医の氏名と施設名は、日本内視鏡外科学会のホームページでも見ることができる。また、病院のホームページのスタッフ紹介の欄に記されていることが多いので、腹腔鏡下手術を検討している場合、1度確認してみると良いだろう。

腹腔鏡下手術が適応にならない場合も

体への負担が少なく、広く行われるようになってきた腹腔鏡下手術だが、ただし全ての患者が受けられるわけではない。

「腹腔鏡下手術が受けられない患者さんも中にはおられます。例えば、腹腔鏡下手術では、気腹(きふく)といって、二酸化炭素でお腹を膨らませて手術を行いますので、ご病気で心機能や呼吸機能が極端に悪い人は、肺が圧迫されたり、血流が滞ってしまいます。こういう方には腹腔鏡下手術は適応になりません。

他にも、切開した部分から取り出せないような、例えば10㎝を超える大きな腫瘍の場合や、何度もお腹の手術経験があり、非常に高度な腸の癒着(ゆちゃく)がある場合などは、腹腔鏡下手術が難しくなります」

腹腔鏡下手術が適応とならないと判断された場合には、開腹手術が選択されることになるが、「ただし、開腹手術が決してダメと言うわけではないので、そこは注意していただきたい」と渡邉さん。あくまでも開腹手術は標準治療であり、その上で腹腔鏡下手術があることを、患者としてはきちんと理解しておく必要があるだろう。

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事検索

注目の記事一覧

がんサポート11月 掲載記事更新!