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放射線治療が中心だが、手術、抗がん剤治療にも進展が

いかに最適な治療法を選択するか 肺がんの脳転移治療

監修●奥田武司 近畿大学医学部脳神経外科学教室医学部講師
取材・文●増山育子
(2012年11月)

奥田武司さん脳転移は個々の患者さんに合わせたテーラーメイド治療が大切と話す奥田武司さん

脳に転移することが多い肺がん。転移した場合の治療の中心は放射線治療だが、放射線治療にもいくつか種類があり、その選択に迷う患者さんは多い。しかも最近では、放射線治療以外にも手術、抗がん剤治療といった治療選択肢も増えているという。

どの治療をどう選べばいいのだろうか――。

脳転移が起きやすい肺がん

■図1 がん種別に見た脳転移の頻度
 ■図1 がん種別に見た脳転移の頻度
脳腫瘍全国統計第12版より

脳転移はがん種を問わず起こる可能性があるが、とくに肺がんでは頻度が高いことが知られている(図1)。また脳転移のある患者さんの5年生存率を見ると、乳がんの13.8%と比べて、肺がんは9.8%と予後が厳しい(図2)。

この理由を近畿大学医学部脳神経外科学教室医学部講師の奥田武司さんは「肺がんの脳転移は進行が早く、また乳がんと比較しても肺がんは放射線治療や化学療法に対する感受性が低いため、全体的な予後が厳しくなります」と説明する。

「頭蓋骨の中に収まっている脳に腫瘍という余分なものができた結果、脳が腫れて(脳浮腫)、圧迫されると頭蓋内圧が上昇します。すると頭痛や吐き気・嘔吐、意識障害などの症状が引き起こされます」

■図2 脳転移の生存率
■図2 脳転移の生存率
脳腫瘍全国統計第12版より


転移が生じた部位では神経系がダメージを受け、麻痺や運動機能が損なわれたり、視野障害、頭痛などが起こる。このような症状ならば早期に気づきやすいが、転移した場所によっては、「うつになった」とか「痴呆が出てきた」「性格が変わった」といった脳転移と結びつきにくい症状が出るため、発見が遅れることもあるという。

幅広く対応可能な全脳照射

脳転移の治療方法には①放射線治療、②外科的治療、③化学療法があり、転移巣の個数やサイズ、脳転移に起因する症状の程度、肺がんの進行度や全身状態などをトータルに考えて、その患者さんに最適なものを選択する。

現在、脳転移治療の中心となっているのは放射線治療。脳全体に放射線を当てる「全脳照射」と、病巣に限定して集中的に当てる「定位放射線治療」がある。

まず全脳照射はがんの大きさや個数に関わらずあらゆる脳転移に使える適応の広さがポイントだ。全脳照射の標準的な方法は1回3グレイを10回または1回2.5グレイを15~16回照射する「分割照射」である。

「1回を少線量で何回にも分けて照射するほうが放射線治療による障害を抑えられます」と奥田さんは言う。

「放射線による障害には、照射後半年~1年経ってから尿失禁や歩行障害、認知障害が起こってくる白質脳症があげられます。一刻をあらそうような患者さんは別ですが、余命が期待できる患者さんには、1回線量が少ない方法で照射するほうが望ましいです」

定位放射線治療はすぐ受けられるところで

ガンマナイフやサイバーナイフに代表される定位放射線治療は、病巣の位置を正確に把握しながらピンポイントで照射するため、周りの正常組織へのダメージを極力少なくすることができる。

ガンマナイフはヘルメット状の照射ヘッドに配置された線源からガンマ線のビームを病巣に向けて集中的に照射する。1回で強い線量を当てることができ、得られる治療効果も高い。放射線治療で起こりやすい脱毛や皮膚障害なども少ない。

サイバーナイフは超小型化したリニアック(直線加速器)にロボットアームを組み合わせて精度を高めた最新機器で、分割照射ができるという利点がある。

「ガンマナイフは局所麻酔をして頭蓋骨を特殊なピンでがっちり固定するので、分割照射できません。1回の照射で治療は終了です。サイバーナイフでは患者さんにあわせた簡易フレームで頭部を固定するので、3㎝以上の大きめの腫瘍でも数日に分けて分割照射で対応することも可能です」

定位放射線治療は治療装置によって特徴があるが、ガンマナイフでもサイバーナイフでも治療成績に違いはない。だからこそ、奥田さんは「脳転移は進行が早いので、治療装置を選り好みして待っている間に定位放射線治療が適応される3㎝を超えてしまいかねません。すぐに治療を始められる施設で受けるべき」とアドバイスする。

腫瘍の大きさ2㎝以下が理想

■症例3 定位放射線治療の効果
■症例3 定位放射線治療の効果

定位放射線治療が適応となるのは2.5~3㎝まで。腫瘍サイズによって治療効果に差があることが明らかになっており、理想は2㎝以下だという(症例3、図4)。

「2㎝までは脳転移をコントロールするのに最低必要な20グレイを上回る線量を照射できるので、長期間に渡って腫瘍の大きさを抑えられることがわかっています。しかし腫瘍サイズが大きくなるほど、放射線によって脳や腫瘍細胞が死滅する放射線壊死や、脳浮腫の増悪が起こりやすくなり、照射線量を減らさなくてはなりません。その結果、腫瘍を制御することができなくなってしまうのです」



つまり、定位放射線治療はがんが小さいうちに発見して開始するのが望ましいのだ。

■図4 定位放射線治療の腫瘍サイズによる効果の差

■図4 定位放射線治療の腫瘍サイズによる効果の差

Serizawa T, et al. Jpn J Neurosurg 2003

2~3カ月に1回MRIなど画像診断を行い、新たな転移を早期に見つけることが大切と奥田さんは話す。





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