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患者のためのがんの薬事典

イマチニブ(商品名:グリベック)慢性骨髄性白血病の画期的治療薬の現在

監修●鈴木憲史 日本赤十字社医療センター副院長・血液内科部長
取材・文●星野美穂
発行:2014年9月
更新:2014年12月

  

慢性骨髄性白血病(CML)の画期的な治療薬としてイマチニブが世に出て約10年。第2世代の薬であるダサチニブ、ニロチニブも登場していますが、慢性骨髄性白血病治療の第1選択はやはりイマチニブです。治療成績の向上とともに、現在の話題は、「服用を中止できるか」に移ってきています。発売後10年を迎えたイマチニブの現状とこれからの課題を追いました。

慢性骨髄性白血病とは――どんな病気?

慢性骨髄性白血病は、骨髄の中で血液細胞の元になる造血幹細胞が腫瘍化して、異常な血液細胞が作られるようになる病気です。自覚症状がなく、ゆっくりと病気が進む「慢性期」に続き、治療をしなければほとんどの患者さんが「移行期」を経て「急性期」となります。これを急性転化と呼びます。

急性期には貧血、感染症、出血など急性白血病と同じような症状が現れます。そして急性転化した場合、抗がん薬の効果は現れにくくなり、予後は非常に厳しいものとなります。

一昔前まで慢性骨髄性白血病の治療には、インターフェロンが使われていました。効果は得られていましたが、最終的な急性転化は避けられず、死亡率は高い状態でした。いわば、不治の病だったのです。

どんな薬?――イマチニブ

◎作用

そのような状況の中、2001年に登場したイマチニブは、画期的な薬でした。慢性骨髄性白血病の原因は、第9染色体と第22染色体が入れ替わってできる異常な染色体、フィラデルフィア染色体です(図1)。フィラデルフィア染色体が作り出すBCR-ABL融合タンパク(チロシンキナーゼ)という酵素が骨髄細胞の異常な分裂を起こし、白血病細胞を作り出すのです。

イマチニブは、BCR-ABL融合タンパクの働きを阻害して、白血病細胞の増殖を抑える薬です。その効果は非常に高く、海外の臨床試験では、5年後の血液学的完全寛解が98%に認められ、細胞遺伝学的完全寛解も87%に認められました(図2)。ほとんどの患者さんが慢性期を維持でき、9割近くの患者さんでほぼ臨床的に治癒するという結果が得られたのです。

図1 慢性骨髄性白血病の原因

フィラデルフィア染色体は9番目の遺伝子と22番目の遺伝子が途中から切れて入れ替わってつながった(相互転座という)もの
図2 イマチニブの効果

◎投与法

イマチニブは経口薬のため、インターフェロンの自己注射に比べ、服用が簡便です(図3)。重篤な副作用が少なく比較的安全な薬のため、外来での治療が一般的です。イマチニブの登場は、治療効果の向上と、患者さんのQOL(生活の質)向上をもたらしたのです。

図3 イマチニブの服用方法(慢性期)

イマチニブ=商品名グリベック 血液学的完全寛解=血液検査で調べて、白血球や血小板などの数値が下がったり、未熟な細胞がなくなるなど一見すると正常に戻った状態 細胞遺伝学的完全寛解=フィラデルフィア染色体陽性率を調べ、陽性率がゼロになった状態

第2世代の薬――ダサチニブとニロチニブ

イマチニブが臨床現場に登場して、約10年が経ちます。この間、イマチニブの弱点も明らかになってきました。副作用のためイマチニブによる治療が続けられない「不耐容」の問題と、薬が効かない、または最初は効いていたのに徐々に効き目が悪くなるという「薬剤耐性」の問題です。

そうした欠点を補う、第2世代の薬が登場しています。ダサチニブとニロチニブです(図4)。試験管レベルでの活性(薬の効き目)は、ダサチニブはイマチニブの300倍、ニロチニブは30倍あると言われています。

図4 ダサチニブ(慢性期)とニロチニブ(慢性期、移行期)の服用法
図5 主な副作用

ただし、ダサチニブとニロチニブの効果はともに高いのですが、どちらも副作用が高い頻度で発現します(図5)。そのため、慢性骨髄性白血病と診断されたら、まずイマチニブを使って治療を開始します。

現在、慢性骨髄性白血病に対する第1選択薬は、実臨床での高い効果と副作用の少なさから、イマチニブです。イマチニブが服用できないほどの副作用が発現した場合や、効果が得られない場合に第2世代薬の使用を考えます。第2世代薬のうちどちらを先に使うかは、合併症や既往症など患者さんの状況をみて決めます。

現在、第3世代となるボスチニブの治験が日本でも行われています。第3世代が出てくることにより、第1世代、第2世代の治療薬で効果がなかった患者さんにも効果が上げられるのではないかと期待されています。

ただ選択肢が増えるぶん、どの薬をどの時点で使うのかといった、「使用方針」を明らかにしていく必要が出てきました。これはこれから検討が進められていく事案です。

ダサチニブ=商品名スプリセル ニロチニブ=商品名タシグナ

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