患者のためのがんの薬事典
エルプラット/エロキサチン(一般名:オキサリプラチン)
進行・再発大腸がんに有効な世界標準の抗がん剤
エロキサチンは進行・再発大腸がんの治療薬として優れた効果を発揮する抗がん剤です。60カ国以上の国で認められていますが、日本ではいまだに未承認のために使用することができません。現在エロキサチンで治療をしている人は個人輸入をしています。
日本での承認が待ち望まれる進行大腸がんに有効な薬
進行・再発大腸がんの第一選択の治療薬、
エロキサチン
進行・再発大腸がん(特に結腸がんと直腸がん)に対する抗がん剤治療が今、注目を集めています。それは、アメリカなど世界の国々で新しい薬が次々に承認されているからです。
日本でとりわけ注目されているのがエロキサチン(一般名オキサリプラチン)です。エロキサチンは、ブリプラチンもしくはランダ(一般名シスプラチン)と同じく白金系の抗がん剤で、注射によって投与(静脈内投与)します。
現在エロキサチンは、進行性結腸直腸がんの第1選択薬、第2選択薬として、60カ国以上で販売されています。さらに広範な臨床開発プログラムが世界各国で実施されており、胃がんや膵臓がんを始めとするその他のがんにもエロキサチンの効果が検討されています。
しかし、日本ではいまだに承認されておらず、アジアでエロキサチンを投与できない国は、日本のほか、北朝鮮とモンゴルだけとなっています。
ほかの薬剤では効を奏さなかった大腸がんの患者に対しエロキサチンを投与したところ、10パーセントほどの奏効率(がんが50パーセント以上縮小した期間が28日以上続いた割合)を示しました。単剤で使用した場合の奏効率はそれほど高くありませんが、ほかの抗がん剤と併用することで、エロキサチンは大きな効果を発揮することができます。それは、現在の標準薬と比較すれば明らかです。
従来の治療法に勝るFOLFOX療法
2004年現在、日本での大腸がんに対する標準薬は、IFL(イリノテカン+5-FU+ロイコボリン)療法と5-FU/LV療法です。IFL療法と5-FU/LV療法の大腸がんに対する奏効率はそれぞれ、39パーセントと20~30パーセントです。
海外では進行・再発大腸がんにIFL療法を行い、それが効かなくなったらIFL療法の3種類のうちイリノテカンをエロキサチンに変えたFOLFOX療法を行うのが一般的です。5-FU/LV療法よりFOLFOX療法のほうが優れていることが立証されているからです。
アメリカの進行・再発大腸がんの患者に対して、FOLFOX療法とIFL療法のどちらが優れているかを調べた、有名な臨床試験があります。奏効率でFOLFOX療法群44パーセントに対し、IFL療法群30パーセント、無病生存期間(再発までの期間)で9カ月対7カ月、生存期間中央値で19.5カ月対14.8カ月と、いずれもFOLFOX療法のほうが優れているという結果がでています。
また、大腸がんの術後化学療法においても、エロキサチンはIFL療法をこえるものであることが明らかになりました。
しかし重ねて言うと、エロキサチンが承認されていないため、FOLFOX療法は日本では受けられないのが現状なのです。
冷たいもので誘発される痛みやしびれに注意
エロキサチンの副作用にはどんなものがあるのでしょうか。
まず独特の神経毒性が挙げられます。冷たいものに接触したときに激しさを増す痛みで、たとえば、冷たい水を飲むと、のどがしびれたりします。冷たいものを触ると、手や足に強い痛みやしびれが起こることもあります。対策としてビタミンB12を内服投与することがありますが、効果はあまり期待できません。強いしびれが手のひら全体や足首まで及んでいるときや、握力が低下しているときは、原則としてエロキサチンの投与を休止します。
ほかには、白血球の一種である好中球が減少したり、吐き気や嘔吐などの副作用が起こったりすることがあります。白血球が減少すると、細菌やウイルスに対する抵抗力が弱くなり、感染症にかかりやすくなります。対策として、抗生物質や白血球を増やす薬剤を投与します。吐き気や嘔吐に対しても、よい薬が幾つも開発されています。なかでも飲み薬、点滴ともにある抗セロトニン剤はよく使われます。
2005年春ごろまでに日本で承認される予定
エロキサチンは妊娠中の女性に投与することはできません。また、妊娠の可能性のある女性は、妊娠しないように気をつけなくてはいけません。
ほかの白金化合物と同様に、薬剤に対する過敏症やアナフィラキシー様の反応を起こすことがありますが、症状を緩和するには抗ヒスタミン剤などを投与します。
エロキサチンの日本での治験(新薬を承認するための臨床試験)は、第1相と第2相試験に関してはすでに終了しています(治験は第3相まであります)。第2相の結果、進行および再発した結腸・直腸がんに対して、エロキサチンはがんの進行を抑制させることが日本でも明らかになっています。
多くの大腸がんの患者、特に進行性の大腸がんや再発した大腸がんの患者は、エロキサチンの一日も早い承認を心待ちにしています。彼らはただ待っているだけでなく、一部の人たちは厚生労働大臣あてに、エロキサチンの承認を求めて「要望書」を提出しています。こうした働きかけもあってか、2005年の春ごろまでに、エロキサチンは大腸がんの治療薬として承認される見通しです。
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