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患者のためのがんの薬事典

アドリアシン(一般名:塩酸ドキソルビシン)
多剤併用療法で再発乳がん、悪性リンパ腫などに有効


発行:2004年11月
更新:2014年2月

  

アドリアシンは化学療法の基本的薬剤として国内外で広く使用されています。
再発乳がん、悪性リンパ腫、膀胱腫瘍などに有効性が認められています。
副作用として吐き気が強く出ますが、ほとんどの方は投与後1週間ほどで落ち着きます。

投与して9日から2週間後は感染症に注意


一般名:塩酸ドキソルビシン   性 状:赤だいだい色の粉末
慣用名:アドリアマイシン   発売元:協和発酵

アドリアシンは、1967年にイタリアの研究者らによって発見されました。以来各国で研究が進み、数種類の悪性腫瘍に対して抗腫瘍効果が認められています。日本でも臨床試験成績に基づき、有用性が確認され、1975年に発売されました。

アドリアシンはアントラサイクリン系の抗がん抗生物質です。体内に入ると、腫瘍細胞のDNAの塩基の間に入り込み、DNAやRNA(リボ核酸)の生合性を抑制することによって、抗腫瘍効果を示すと考えられています。

適応疾患については記事末の表のとおりです。日本での適応疾患は、小細胞肺がん、消化器がん(胃・胆嚢・胆管・膵臓・肝臓・直腸・結腸など)、乳がん、悪性リンパ腫、膀胱腫瘍、骨・軟部肉腫、子宮体がんなどです。ただし消化器がん、子宮体がんは標準治療薬ではありません。小細胞肺がんは70年代に標準治療薬でしたが、現在はブリプラチン(またはランダ)+ベプシド(またはラステット)もしくはブリプラチン+トポテシン(またはカンプト)が標準治療薬です。

RNA=DNAとともに生物の遺伝情報をたくわえた核酸の一種。

AC、ABVBなどが代表的な併用療法

アドリアシンは単剤でも有効率の高い抗がん剤ですが、現在は単剤よりも多剤併用療法としてよく使用されます。代表的なものとして、次のような療法があります。

●乳がん
AC(アドリアシン+エンドキサン)療法は再発した乳がんの第一治療薬です。ただし乳がんの手術後、再発や転移を防ぐために術後の化学療法でアントラサイクリン系薬剤を多用した場合は、アントラサイクリン系からタキサン系薬剤を含む併用療法に変わりつつあります。

●悪性リンパ腫
ABVD(アドリアシン+ブレオ+エクザール+ダカルバジン)療法はホジキンリンパ腫の標準治療薬、CHOP(エンドキサン+オンコビン+アドリアシン+プレドニゾロン)療法およびR(リツキサン)-CHOP療法は非ホジキンリンパ腫の標準治療薬です。

●膀胱腫瘍
M-VAC(メソトレキセート+エクザール+アドリアシン+ランダまたはブリプラチン)療法は、がんが膀胱の壁に深く浸潤している場合やリンパ節または他の臓器に転移している場合に用いられます。

●骨・軟部肉腫
腫瘍をつくっている細胞の形態の違いに合わせて、効果的な抗がん剤が選択されます。単剤かアドリアシンを含む併用療法が用いられます。

心筋障害、吐き気、脱毛が主な副作用

アドリアシンは、点滴で用いる注射剤です。1日1回、体重1キログラム当たり0.2ミリグラム(体重50キログラムの場合は10ミリグラム)を4~6日間連日、または体重1キログラム当たり0.4ミリグラム(体重50キログラムの場合は20ミリグラム)を2~3日間連日投与後7~10日休薬、もしくは体重1キログラム当たり0.4~0.6ミリグラムを3日間連続投与後18日間休薬を1クールとして、2~3クール繰り返します。

しかし実地医療との乖離がはなはだしくなったため、最近行われた抗がん剤併用療法検討会において、AC療法の場合、患者の体表面積1平方メートル当たりアドリアシン60ミリグラム、エンドキサン600ミリグラムを3週間(または4週間)に1回投与法の使用が適応の中に盛り込まれました。

治療中の主な副作用は、心筋障害、心不全、骨髄抑制、ショック、肝障害、食欲不振、悪心・嘔吐、口内炎、脱毛、倦怠感、頭痛などです。また、投与中アドリアシンが血管外に漏出してしまった場合、皮膚障害が強く出ます。

また蓄積投与量が体表面積1平方メートル当たり550ミリグラムを超えると、心機能障害が起こる可能性があると考えられています。そのため、この量を超える場合は心電図や心臓超音波の啓示的なモニタリングが必要になります。

投薬中の日常生活の注意

アドリアシンの悪心・嘔吐の頻度や程度は、ブリプラチン(またはランダ、一般名シスプラチン)に次いで強く現れます。アドリアシンを投与してから約1時間後に吐き気が出ることがしばしばあります。普通吐き気は4、5日続き食欲が低下しますが、1週間もすれば治まります。無理をせず、少しずつ食べましょう。吐き気が1週間以上も長引くのはまれなことで、非常に敏感な方の場合です。アドリアシンは通常3週間(ときには4週間)に1回の頻度で行う治療なので、最初の1週間は調子が悪くなりますが、そのあとは食欲も元に戻ります。

投与して9日から2週間後には、白血球が最低になることが一般的です。白血球が少ないと病原菌に対する抵抗力が弱くなり、風邪をひくとすぐに発熱することがあります。高熱が出ると肺炎になる可能性があるので、主治医に相談して適切な処置をしてもらってください。

■アドリアシンの臨床と薬理学のデータ
完治をめざすために使用する
●急性リンパ性白血病、急性非リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫(大細胞型)、ホジキン病・乳がん(補助療法)
●小細胞肺がん(最終ステージ)、骨形成肉腫(補助療法)、軟部肉腫(補助療法)、卵巣・精巣の胚細胞腫瘍
緩和をするために使用する
●再発した白血病(急性リンパ性白血病と非リンパ性白血病)、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫
●非ホジキンリンパ腫(中細胞型)、転移・再発した骨形成肉腫および軟部肉腫、悪性中皮腫、カルチノイド、島細胞腫瘍
●膀胱・乳・頭頸部・肝臓・肺・卵巣・膵臓・前立腺・胃・甲状腺・精巣(再発)・子宮がん
アドリアシンの副作用
【急性】
・骨髄抑制、粘膜障害、口内炎、脱毛、悪心、嘔吐、食欲不振、顔面紅潮、静脈の緊張
【慢性】
・うっ血性心筋症、血管障害
【局所的なもの】
・以前放射線を当てた部分に湿疹が出る
・血管外漏出した場合は皮膚が壊死する
・肝障害が起こった場合は50~70%量に減量する

『The Chemotherapy Source BooK』第3版より

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