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- 山崎多賀子が聞く『快適に暮らすヒント』
がんサバイバーが専門家に聞いてきました!
――美容ジャーナリスト山崎多賀子の「キレイ塾」
がんになっても快適に暮らすヒント Vol.5 がん患者と家族・友人の第2の我が家「マギーズ東京」始動!
2016年10月10日(月・祝)、東京・豊洲に、「がん患者が自分の力を取り戻す場」、maggie’s tokyo(以下、マギーズ東京)がついにオープンしました。オープニングの当日は盛大なフェスティバルが催され、テレビや新聞、Webでも報道されたので、ご存じの方も多いと思います。
私もボランティアで「がんサバイバーによるファッションショー」の裏方を担当させていただきました。温もりにあふれたイベントから半月あまり。改めてマギーズ東京はどんな場所なのか、訪問看護師でマギーズ東京のセンター長、秋山正子さんを訪ねました。
山崎 いよいよマギーズ東京が始動しましたね。おめでとうございます。秋山さんは日本にマギーズセンターをつくりたいと、ずっと訴えてきたそうですが、マギーズセンターは、どういう場所なのでしょう。
秋山 マギーズセンターは、がん治療の過程のどんな状況であっても、患者さんやご家族が、自分で考える力を取り戻し、再び生きる喜びを見出すための場所です。
私は、2008年に参加した国際的な看護セミナーで、英国・エジンバラにあるマギーズセンター長、アンドリュー・アンダーソンさんの発表を聞き、その存在を知りました。
「患者ではなく1人の人間として自分を取り戻せる居場所やサポートがほしい」というがん患者マギー・ジェンクスさんの遺志から1996年に創設され、以来、継続的にがん患者や家族のための支援が行われていることに、目を奪われたのです。私がやりたいと思ってきたことだったからです。それからすぐに英国マギーズを訪ねて交流を重ね、マギーズ準備室の意味も込めて新宿に「暮らしの保健室」をつくり、「日本にマギーズセンターをつくる」と、ずっとつぶやき続けてきました。
山崎 つぶやきの結果、マギーズ東京の共同代表となる、鈴木美穂さんと出会ったわけですね。24歳で乳がんなった鈴木さんも、先が見えない不安の中、「安心して相談ができる自分の居場所のようなところがあったらどんなに救われたか」との思いから、若年性がんの患者会を立ち上げたり、がん治療中でも参加しやすいワークショップの運営をされていた。
2014年にマギーズセンターのことを知った鈴木さんは、即、マギーズセンターに関する秋山さんの論文を検索し、コンタクトを取ったそうですね。
秋山 はい。じつは私がマギーズセンターを知った年に、鈴木さんに乳がんが発覚していて、運命的なものを感じました。私が地道にマギーズセンターを日本に誘致するための交渉を英国と続けており、共感する仲間が*プロボノで動き出していることを話したところ、テレビ局の記者でもある鈴木さんが「広報と土地の確保と資金繰りを頑張るから一緒にやろう」と言ってくれ、出会いからわずか2年でマギーズ東京誕生にこぎつけました。
*プロボノ=社会人が職業上養った知識やスキル、経験を活用して社会貢献するボランティア活動全般
ここは「第2の我が家」。「モヤモヤ」を吐き出して前に進もう
山崎 医療と場所と資金。お2人の両輪が揃い、そこへ多くの寄付者やボランティアの力が加わり夢を現実のものとした。そのスピード感は驚き以外の何ものでもありません。
マギーズセンターは治療の場ではありませんね。どのような役割を果たす場ですか。
秋山 ここは病院と自宅の間にある「第2の我が家」です。
いまどこの病院も、診察、治療ともに短期集中化していて、患者さんがじっくり自分のことを話せる環境にはありません。そして患者さんの中には、自分のすべてががんに占領されてしまい、絶望感や孤独感の苦しみから抜け出せないでいる方も多くいるのです。この気持ちを家族にぶつけたら心配されるだろうし、友達に話したら距離感ができてしまう。「どこに、誰に、話したらいいかわからない!」という患者さんや、そのご家族のための場所です。
がんについて、これまでの人生のことも含めて、遠慮なく話すことができ、もちろん話したくなければ、1人でボーッとしたり、お茶をするだけでもいいのです。
山崎 それで第2の我が家なんですね。
秋山 話したり、お茶を飲んで一息ついて、呼吸が楽になったら、見える景色が変わってくる。そうしたら少し前へ進める。再び自分で考える力を取り戻していただけるように支援します。
山崎 平常心を欠いているときに気持ちをコントロールすることは難しいですから、何か前を向くきっかけの場があると助かりますね。私もがん治療を受け入れるまでは、いつも動悸がして、息が入ってこなくて、焦って、本当に苦しかった……。
秋山さんは訪問看護をされてきましたが、そのスタンスも関係するのでしょうか。
秋山 そうなのです。「患者中心の医療」と言っても、たくさんの患者さんを診る病院は「患者として来る人」を安全に管理しながら、流れるように医療を行うしかありません。
訪問看護は、お宅に伺って相手の土俵の中でケアをします。受け入れてもらえなければ仕事ができませんから、相手の立場や環境に合わせて必要なことを第1に考えます。お宅へ伺ったら患者さんへのケアよりも先に家族の悩みを聞くこともしばしばで、これも大事なケアなのです。
山崎 確かに、病院が受け身なのに対して、自分から患者に寄り添っていくのが訪問看護ですね。その実践経験から、マギーズセンターのような場所が必要だと強く感じられたのですね。
秋山 「がんを告知されて奈落の底に落ちてから、ずっともやもや感を抱えている」とみなさんおっしゃいます。もやもやがあると、前へ進めません。そこで話したいけれど話せなかった気持ちを、時間をじっくりかけてうかがう中で、少し解きほぐされ、美しい景色に気づくと、「きれいね。そういえば周りの景色を、最近まったく見ていなかったわ」と。肩の力が抜けると、それなりの方向性を自分で決めていけるようになるのです。
一部撮影協力:村上紀美子
一人で泣けるトイレ
●マギーズ東京
〒135-0061 東京都江東区豊洲6-4-18(ゆりかもめ 市場前駅北口より徒歩3分)
TEL:03-3520-9913 E-mail:info@maggiestokyo.org
開館時間:月~金(10:00~16:00)※土日祝は、イベント開催時のみオープン
●寄付のお願い
マギーズ東京は英国のマギーズと同様、志ある個人や企業、 団体のチャリティによる建設・運営にチャレンジしています。お力添えをいただける方は以下までお願いいたします。
・振込先
みずほ銀行市ヶ谷支店 普通口座2281171 トクヒ)マギーズトウキョウ
ゆうちょ銀行 記号10080 番号48470541 トクヒ)マギーズトウキョウ
・名前、メールアドレス、連絡先、寄付金額、振込日を donate@maggiestokyo.org までお送りいただければ幸いです。
・その他インターネットでのクレジットカード寄付、寄付会員などもあります。詳しくは、ホームページをご参照ください。
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