ゼヴァリンについて知りたい

回答者:岡元 るみ子
東京都立駒込病院 化学療法科医長
発行:2008年4月
更新:2013年12月

  

63歳の父が悪性リンパ腫と診断されました。B細胞性非ホジキンリンパ腫の濾胞性リンパ腫3期とのことです。発熱などの症状も出ています。リツキサン(一般名リツキシマブ)という薬を加えた化学療法を受ける予定です。インターネットなどで調べてみたところ、悪性リンパ腫にはゼヴァリン(一般名イブリツモマブ)という新薬が発売されることを知りました。父の治療にも使えるのでしょうか。また、どの程度の治療効果があって、どんな副作用があるのかについても知りたいと思います。

(千葉県 女性 35歳)

A リツキサンが効かない場合に効果が期待される

リツキサンは、分子標的治療薬です。非ホジキンリンパ腫のB細胞の表面マーカーCD20という抗原に取りついて抗腫瘍効果を発揮する抗体の作用を持つ薬剤です。リツキサンは、骨髄抑制という副作用がほとんどありません。そのため、骨髄抑制のある抗がん剤と併用して治療効果を高めることができます。

ゼヴァリンは、リツキサンと同じようにB細胞表面上のCD20に対する抗体に放射性同位元素を結合させたものです。悪性リンパ腫細胞の中には、細胞表面にCD20のないものもあります。リツキサンは、CD20陽性のリンパ腫細胞にしか効果がありませんが、ゼヴァリンは、放射性同位元素が放出するベーター線が、CD20陽性リンパ腫細胞に加えて、その周囲のCD20を持たないリンパ腫細胞まで攻撃します。ゼヴァリンは、リツキサンが効かない場合などに、治療効果が期待されますが、リンパ腫細胞が骨髄に浸潤をきたしているときなどは、使用が難しくなります。骨髄の中で正常な造血幹細胞も障害させてしまい、骨髄抑制という副作用が出現するからです。

臨床試験ではリツキサンに対して抵抗性のある濾胞性リンパ腫54人に、ゼヴァリンを投与した場合の奏効率は74パーセントでした。副作用は、投与後6~7週間後に出現する骨髄抑制です。前述したように、一定以上の骨髄浸潤があった場合には使用できません。

一般的に、ゼヴァリンと抗がん剤の併用はできず単独でしか使えません。ゼヴァリンは日本で初めて承認された放射線抗体薬で、1月28日に、製造販売承認されて、保険適応されました。適応は、再発または難治性で、低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫ならびにマントル細胞リンパ腫です。最初にリツキサンを投与して正常細胞を保護したあとに、病気の状態をモニターしてからゼヴァリンを投与するという3段階が必要です。放射性同位元素の配合や投与の際には、慎重な対応が求められます。投与できる病院は専門医が所属する医療機関に限られます。

ご相談者のお父様は、進行性低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫ですから、再発や治療が効かない場合、ゼヴァリンの治療を受けることができます。ただ、前述したような理由もありますから、最初は、リツキサンと抗がん剤との併用療法が標準的治療となります。そのあとで、ゼヴァリンの治療選択もあるとお考えください。

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