ミニ移植を受けたい。55歳でも大丈夫?

回答者:谷口 修一
虎の門病院 血液科部長
発行:2007年5月
更新:2013年12月

  

首にグリグリが見つかり、診察を受けると、悪性リンパ腫にかかっていることがわかりました。以来、抗がん剤治療と放射線治療を受けてきました。いったんは病状がよくなったのですが、再発が起こってしまい、治癒には至りませんでした。ミニ移植という治療法があると知り、ぜひ私も受けたいと思っています。この治療法は、体への負担がかなり軽いそうですが、55歳の私でも受けることができるのでしょうか。また、ミニ移植は、従来からある骨髄移植とどこが違うのでしょうか。教えてください。

(福岡県 男性 55歳)

A 年齢的には問題なし。ミニ移植の前に自家移植を考えては

悪性リンパ腫の治療として、造血幹細胞移植が行われることがあります。ご質問にある「骨髄移植」は、造血幹細胞移植の1つの方法です。かつては骨髄を移植していたため、このように呼ばれていました。現在では、骨髄以外に、末梢血や臍帯血などの移植も行われています。そこで、骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血幹細胞移植を総称して、造血幹細胞移植と呼ぶようになっているのです。

造血幹細胞移植では、移植の前に大量の抗がん剤治療や放射線治療を行い、そこでがん細胞を徹底的にたたき、病気を治します。このとき、骨髄も大きなダメージを受けるので、造血幹細胞を移植して、造血機能を回復させようという治療法です。

これに対し、ミニ移植では、前処置の抗がん剤や放射線の量は減らし、まずドナーからの造血幹細胞の移植だけを成立させます。患者さんには通常量の免疫抑制剤だけを投与し、ドナーの細胞による同種免疫反応によって、病気を治癒させるのです。

つまり、従来の造血幹細胞移植が抗がん剤と放射線の力で治す治療法なのに対し、ミニ移植は免疫の力で治す治療法なのです。

ミニ移植は大量の抗がん剤や放射線を使用しないため、高齢でも受けることができます。従来の造血幹細胞移植は、せいぜい50~55歳まででしたが、ミニ移植は70歳までは普通に行われています。だから、55歳という年齢は問題になりません。

ただし、あなたの病気に、ミニ移植が最も適切とは限りません。質問の文面だけからでは詳しいことがわかりませんが、ミニ移植の前に、自家末梢血幹細胞移植も考えてみる必要がありそうです。抗がん剤で完治しなかったとしても、抗がん剤に対して感受性があるがんであれば、自家末梢血幹細胞移植を選択する価値があります。

自家末梢血幹細胞移植は、患者さん自身の末梢血を利用する治療法です。抗がん剤治療を行った後、ダメージを受けた骨髄が回復していくときには、末梢血にも造血幹細胞が流れ出します。これを採取して冷凍保存しておき、大量の抗がん剤治療を行った後で移植するのです。

ドナーからの移植では、白血球の型を合わせる必要がありますが、自家移植ではそれが必要ありません。ミニ移植に比べて安全なので、自家移植が可能であれば、そちらを考えてみるべきでしょう。

ミニ移植は、その名前のイメージから、楽で安全な治療法だと誤解している人がいます。ところが、同種免疫反応はきわめて強力な反応なので、必ずしも安全な治療法というわけではないのです。

ミニ移植を受けたいとのことですが、最初からミニ移植ありきと考えるのではなく、自分にとって最も適切な治療法は何であるかを、まず考えるべきでしょう。

同じカテゴリーの最新記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート4月 掲載記事更新!