2期の非ホジキンリンパ腫。放射線治療を追加したほうがいいか

回答者:岡元 るみ子
東京都立駒込病院 化学療法科医長
発行:2012年8月
更新:2013年12月

  

2期のびまん性大細胞性B細胞性リンパ腫で、病変は、首と縦隔にあります。治療法として、多剤併用療法を勧められていますが、放射線治療も併用したほうがよいといわれています。放射線治療はしたほうがよいのでしょうか。併用すると、効果はどの程度あがるのでしょうか。

(神奈川県 女性 45歳)

A 化学療法に放射線を併用するのが標準治療

1期または、病変領域が隣接している2期の非ホジキンリンパ腫の場合は、通常、R-CHOP療法3コースに、放射線治療を併用する治療が標準的な治療となっています。

1998年に海外で行われた臨床試験の結果によると、①CHOP療法8コースを行った群と、②CHOP療法3コースと放射線治療を行った群を比べると、②のCHOP療法と放射線治療を併用したほうが、5年間の生存割合が高いという結果が出ています。

ただ、放射線を併用するのは、前述の「病変が隣接している」場合に限られます。放射線にも正常な臓器に対する副作用があるためです。

例えば、下顎(あごの下)のリンパ節と脇の下のリンパ節が腫れている場合も、病期は2となります。ですが、この場合は、病変のあるリンパ節領域が離れているため、両方一緒に放射線治療をしようとすると、放射線の照射範囲が広くなり、心臓や血液を造る骨髄の力が弱くなってしまうこともあるため、この場合は放射線治療は併用しません。

この方の場合は、病変が首と縦隔にあり、放射線治療を勧められたことから、病変のリンパ節領域は隣接していると考えられます。そのため、化学療法と放射線治療の併用が標準的な治療となります。

前述の論文では10年程度の長期の生存割合でみると、①と②の治療法を比較しても、生存割合の差がほとんどなくなってくると報告されています。これは、②の治療群で、放射線をかけた場所からの再発を抑えることができるが、それ以外の場所からの再発が起こってくるのが1つの理由です。

結果をさらに詳細にみてみると、②の治療群の患者さんでも、再発のリスク要因が少ない患者さんでは、長期生存が認められています。つまり、もともと再発リスクが低い患者さんの場合は、化学療法を軽減した治療を行うのが適切と考えられるのです。

逆に、再発リスクが高い患者さんでは、抗がん剤治療を合計6から8コース行います。現在ではリツキサンを併用した、効果が高いR-CHOP療法が行われます。再発リスクが高いというのは、例えば、病変が大きい場合、リンパ節以外の2カ所以上に病変がある場合、年齢が高い場合などです。

放射線の副作用も主治医にしっかり聞いておきましょう。頸部の左右に病変があり、頸部に広く放射線をかける場合などは、放射線照射によって唾液腺が障害され唾液(つば)が出にくくなります。口の中が乾燥するため、食事がおいしく感じなくなることがあります。放射線照射を加えるか、化学療法を長く続ける治療をとるか患者さんのQOL(生活の質)も考えて、治療を決めていきます。

この方については、病変の大きさなど、再発リスクに関する情報がありませんので、確かなことはお話しできませんが、そのあたりも含めて主治医と相談をされたらよろしいかと思います。

縦隔=左右の肺と胸椎、胸骨に囲まれた部分 R-CHOP療法=エンドキサン(一般名シクロホスファミド)+アドリアシン(一般名塩酸ドキソルビシン)+オンコビン(一般名ビンクリスチン)+プレドニン(一般名プレドニゾロン)の4剤による抗がん剤治療であるCHOP療法に、リツキサンを併用した治療 CHOP療法=エンドキサン(一般名シクロホスファミド)+アドリアシン(一般名塩酸ドキソルビシン)+オンコビン(一般名ビンクリスチン)+プレドニン(一般名プレドニゾロン)の4剤による抗がん剤治療

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