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肺がんの骨転移に有効な治療法は?

回答者:吉田 純司
国立がん研究センター東病院 呼吸器外科医長
発行:2010年12月
更新:2013年12月

  

75歳の父のことでご相談します。降圧剤と抗血小板剤を服用しています。05年に早期前立腺がんの手術を受け、がんは取り切れました。06年には原発の肺がんで1B期と診断され、右下葉を切除しました。以後、年1回のPET、半年ごとに肺のCT検査を続け、再発はありませんでした。しかし、今年9月に腰痛を訴え、MRI検査をしたところ、仙椎の背側に直径1センチの腫瘍が見つかりました。骨シンチ検査、PETではその他の部位に異常はありません。PSA検査で0を維持していることから前立腺がんからではなく、肺がんからの転移の可能性が高いと言われました。今は腰痛は治まりましたが、今後できるだけ予後をよくする治療として、どのような可能性がありますか。(1)ビスホスホネート、(2)樹状細胞ワクチン療法、(3)重粒子線治療、陽子線治療などはいかがでしょうか。また、(1)~(3)の併用はいかがでしょうか。

(北海道 女性 40歳)

A 一般的には単剤治療。体力があれば2剤併用も

順番にお答えします。

(1) 「Q:繰り返す転移がんに放射線治療はどうか?」でもお答えしたように、骨転移には、ビスホスホネートをお勧めします。

(2) 樹状細胞ワクチン療法は、肺がんに効くというデータは現時点ではありません。期待して治療される分には絶対だめとは言えませんが、治療施設は選んだほうがいいでしょう。「副作用がない」という言い方をする施設は基本的に避けたほうがよいと思います。

(3) 重粒子線・陽子線治療とは、照射野をうんと絞った放射線治療です。骨転移があるということは、がんが散らばっている可能性が高く、照射野を狭くして放射線をかける治療は適しません。通常の放射線で対応できると思います。

ただし、通常の放射線では背骨の前にある膀胱や直腸にも当たって副作用が問題になるかもしれず、それを防ぐために重粒子線治療などを用いることも考えられます。骨転移の場所と周囲の臓器との関係によりますので、放射線科の先生とよくご相談ください。

なお、(1)~(3)を併用して支障が出ることはありません。

いずれにしろ骨転移があるので、全身にがんが広がっていると考えられます。このような場合の基本的な治療は化学療法です。化学療法科か呼吸器内科に「今、抗がん剤治療を行うのはどうですか」と相談されてはいかがでしょうか。

PET=陽電子放射断層撮影
仙椎=腰椎と尾骨の間にある背骨の一部
骨シンチ(骨シンチグラフィ)検査=放射性医薬品を使う骨の核医学検査で、がんが骨に転移していないかを調べる
PSA=前立腺特異抗原。この値が上がると前立腺がんの可能性が高くなる
予後=今後の病状の医学的な見通し

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