1期の非小細胞肺がん。手術でリンパ節を取る理由は?

回答者:吉田 純司
国立がん研究センター東病院 呼吸器外科医長
発行:2008年3月
更新:2019年8月

  

非小細胞肺がんと診断されました。病期は1期とのことです。担当医から外科治療を勧められています。手術ではリンパ節も取ると言われました。なぜ、リンパ節を取るのでしょうか。取らないと予後への影響はあるのでしょうか。また、取った場合、体への影響はないのでしょうか。

(岐阜県 男性 59歳)

A がんが広がりやすい部位のリンパ節は取り除く

リンパ節を取る第1の目的は、画像や肉眼では診断しきれないリンパ節への広がりを顕微鏡で調べることです。体外からの画像診断にも手術中の肉眼所見にも限界があります。画像で非小細胞肺がんの1期と診断されても、そのうちの2~3割の方のリンパ節には、顕微鏡で認められる転移があって、もっと進んだ病期なのです。

第2の目的は、リンパ節に広がったがんを取り残さないことです。がんを残しておくと、いずれ育って、命を脅かすことになります。見た目だけではリンパ節にがんが入り込んでいるかどうか確定できませんので、がんが広がりやすい部位のリンパ節を取り除いてしまうわけです。しかし、がんが広がってしまったリンパ節を切除しても、治るとは限りません。そのような場合には、がん細胞は血液やリンパ液に乗って、全身にすでに広がっている可能性が高いからです。リンパ節を取ることで治るようになる方は、手術を受けられた方の1割程度に過ぎないであろうと概算されており、リンパ節を取らないことによる予後への影響は限られていると考えられています。

リンパ節を取ることへの体への影響ですが、通常はあまりありません。ただし、気管支動脈という空気の通り道(気管支)を栄養する動脈がリンパ節近くを通っていますので、リンパ節を取る際にこれをある程度切ることがあります。そのため、気管支の血の巡りが悪くなって、最悪の場合には気管支に穴があいて致命的になることがあります。

また、反回神経という声帯や食物を飲み込む動きに関わる神経も、手術で取るリンパ節の近くを通っています。この神経に多少傷がついて、声がかれたり、むせやすくなったりすることがありますが、通常は一時的なダメージで、半年から1年ほどで自然に回復します。

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