3期の非小細胞がん。手術は避けたいのですが……

回答者:吉田 純司
国立がん研究センター東病院 呼吸器外科医長
発行:2005年10月
更新:2019年8月

  

2カ月前、74歳の父が非小細胞がん(扁平上皮がん)の3期と診断されました。腫瘍が血管近くに達しており、その時点では手術は難しいと言われ、抗がん剤と放射線での治療を受けました。その結果、がんが縮小し、手術ができる可能性が出てきたとのことです。手術後にも抗がん剤治療を行うと言われていますが、年齢などを考えると、体力が持つか心配です。本人も手術には積極的ではありません。手術をしないで、このまま放射線と抗がん剤治療を続けても治癒は望めないのでしょうか。手術の危険性はどの程度あるのでしょうか。

(東京都 女性 46歳)

A 手術死は1割前後。化学放射線治療で治る確率も1割前後

ご質問の文面だけでお答えするのは、かなり困難です。それは、不確かな部分が多いからです。

たとえば、肺がんの3期といっても、3A期と3B期があり、それぞれの中にも複数の状態が含まれています。また、「腫瘍が血管近くに達しており」とお書きですが、どの血管かわかりません。このような状況の違いによって、手術の危険性や効果の程が違いますから、ほかの医師に意見を求める場合は、できるだけ具体的な内容をお書きになって下さい。

そのようなわけで、一般的なお答えにしかなりませんが、まず問題なのは、縮小してがんがなくなったように見える場所には本当にがんがないのか? という点です。実は、これは切除して顕微鏡で調べないと分かりません。なくなっていなければ、切り口にがんが残ることになります。がんが残るような手術を行っても通常は役立ちません。

また、放射線治療は組織の治癒能力を損ないます。肺の手術では、空気の通り道である気管支を切断してその切り口を縫い閉じます。治癒能力が大きく低下していますと、この縫い口がうまく治らずに開いてしまい(気管支断端瘻)、そこから細菌が胸の中に入って致命的な事態になりかねません。

放射線と抗がん剤治療の後に手術を行う方法は、欧米で積極的に行われていますが、このような手術によって死亡する率は1割ほどもあることが報告されています。それでも、治る可能性が高まるとしてこの方法は試みられているわけですが、ご本人も手術に積極的ではないときに、これほど危険な手術に踏み切るべきかどうかは難しいところです。

では、このまま放射線と抗がん剤治療を続けた場合はどうかというと、3期の非小細胞がんに関する5年生存率は1割前後です。なかには、治癒する人もいます。

手術を受けると、1割くらいの確率で手術のために亡くなる可能性がある。放射線と抗がん剤治療を続けると、1割くらいの確率で治るかもしれない。これらのデータをもとに、再度お考え下さい。

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