術前化学放射線療法とは?

回答者:坪井 正博
横浜市立大学附属市民総合医療センター呼吸器病センター 外科・化学療法部准教授
発行:2013年2月
更新:2019年8月

  

ⅢA期の非小細胞肺がん(肺尖部胸壁浸潤がん)と診断されました。リンパ節転移はありません。医師からは、術前化学放射線療法を行ってから手術をすると言われております。この術前化学放射線療法とは、具体的にどのような治療なのでしょうか。

(山形県 男性 59歳)

A 抗がん薬治療と放射線治療を行ってから手術

当院でも術前化学放射線療法を行うことが、年間2~3例あります。

治療内容は、抗がん薬はシスプラチン+ナベルビン、シスプラチン+TS-1、またはシスプラチン+タキソテールです。日本では、これら薬剤の組み合わせた治療法のいずれかを行う医師が多いです。

外来治療では、パラプラチン+タキソール+放射線治療の同時併用という選択肢もあります。

肺尖部胸壁浸潤がんで手術を前提に化学放射線療法を行う場合には、原則縦隔リンパ節に転移が無いことが条件であり、原発巣(がんの発生場所)とその周りのリンパ節に放射線照射を行います。

放射線の照射量は、計40~45グレイが一般的で、治療期間は1カ月ほどです。抗がん薬にシスプラチンを使う場合、多くの病院で放射線治療は外来で受け、抗がん薬の点滴静注のときだけ入院します。抗がん薬治療のみで極力入院しないようにするのが、現在の医療施設の原則なのです。

化学療法の副作用以外に、放射線治療の副作用として、「Ⅱ期の非小細胞肺がんの治療法は?」でもご説明しましたが、食道炎が起きることがあります。皮膚炎、間質性肺炎、放射線肺臓炎も起こることがあります。

私は、肺尖部胸壁浸潤がんの患者さんには、基本的に抗がん薬治療と放射線治療を行ってから手術を行います。

それは、肩から腕にかけた痛みを伴った患者さんが多く、痛みを早く取る意味でも、抗がん薬と放射線の同時併用で腫瘍を小さくすることは大事だと考えるからです。

従って、体力的、あるいは精神的な問題がなくて積極的に治療ができる状況であれば、ご相談者は術前化学放射線療法を受けたほうがよいと思います。

一方、諸般の事情から抗がん薬と放射線を同時に行うことが難しい場合、痛みがあれば放射線を、痛みがない、あるいは軽度であれば抗がん薬を先行して行って手術で取りきることを目指します。主治医の先生とよくご相談下さい。

シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ ナベルビン=一般名ビノレルビン TS-1=一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム
タキソテール=一般名ドセタキセル パラプラチン=一般名カルボプラチン タキソール=一般名パクリタキセル

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