手術後、4年半。化学療法を継続すべきか

回答者:上野 秀樹
国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科医師
発行:2010年4月
更新:2013年11月

  

57歳のときに膵臓がんの手術(膵頭十二指腸切除術)を受け、その後、4年半にわたり、ジェムザール(一般名塩酸ゲムシタビン)とTS-1(一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)を併用した化学療法を受け続けています。今年の6月で手術後、満5年になるのを機に、化学療法をやめる選択肢もあると医師に言われました。白血球減少などの副作用の問題もあるためです。しかし、化学療法をやめることによる再発の心配もあり、副作用と再発のどちらを重く見るか、心が定まりません。

(神奈川県 男性 62歳)

A 半年以上の長期投与のメリットはない

膵臓がんは見た目以上にがんが広がっていることが多いため、手術で膵臓のがんを取り除いても、目に見えないがん細胞が体の中に残っていて、再発する可能性が高い疾患です。そのため、治療成績の向上を目指して、手術に化学療法や放射線療法を組み合わせる治療(補助療法)が現在、積極的に試みられています。

それらの中でもジェムザールは、ドイツで行われた臨床研究で術後に使用すると再発までの期間を遅らせ、かつ延命効果を有することが証明されたため、現在は補助療法を行う際の標準薬に位置づけられています。現在は、さらに優れた治療効果を求めて、さまざまな補助療法の研究が行われており、ご相談された方が受けてこられたジェムザールとTS-1の併用療法も、期待されて試みられている治療法の1つです。

一方、今回のご質問である「膵臓がんの術後の補助化学療法はいつまで続けたらよいか」といった治療期間の問題に関しては、今のところ明確な答えが存在していません。しかし、先にご紹介したドイツの臨床研究では、ジェムザールの投与期間は半年間に限定されており、それ以外の有力な研究においても、補助化学療法の期間は大半が半年前後です。したがって、一般臨床においても、膵臓がんの術後は、補助化学療法を半年から長くても1年程度行い、明らかな再発を認めなければ、その後は経過観察を行うといった方法が広く用いられています。

膵臓がんは術後に約8割が再発することが知られていますが、再発のリスクは時間の経過とともに低下していきます。私たちの調査でも、膵臓がんの手術を受けた方の中で約半数の方が1年以内に再発しており、2年目までには約7割が再発していました。したがって、手術から2年以上経過すると再発の可能性は低くなり、さらに5年以上経過すると完治している可能性が高くなります。

ご相談者は術後、無再発の期間が4年以上続いているので、完治している可能性も十分に考えられます。もしがんが完治しているのであれば、補助化学療法を続けることは正常な細胞にダメージを与えているにすぎず、場合によっては、今後、重篤な副作用や不可逆的な障害を起こす危険性も秘めています。以上により、膵臓がんの術後に補助化学療法を行う際には、次の4点などを考慮する必要があります。

(1)半年以上の長期投与のメリットは示されていない

(2)化学療法の投与期間が長くなれば、正常細胞へのダメージも大きくなる

(3)時間の経過とともに再発の可能性は低くなる

(4)手術のみで完治している可能性もある

ご相談者は、検査で明らかな再発が認められないのであれば、主治医と相談の上、経過観察に切り替えてもよいのではないかと思います。

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