サリドマイドは膵臓がんに効果はあるか

回答者:池田 公史
国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科医師
発行:2007年8月
更新:2013年11月

  

サリドマイドが「がんに効く」という話を聞きました。身内にがん患者がいる者として、とても関心があります。膵臓がんに対しても、サリドマイドの研究が行われているという話も聞きました。現状でのサリドマイドの可能性と問題点、とりわけ膵臓がんに対するそれらについて教えてください。

(大分県 女性 64歳)

A 膵臓がんに有用といえる根拠は、今のところない

サリドマイドは1957年に睡眠導入剤として開発された薬です。その後、サリドマイドを服用した妊婦から奇形の子供が多数産まれ、大きな社会問題になりました。

近年、サリドマイドには血管新生阻害作用があることがわかり、がんに対して効果があるのではないかといわれるようになっています。なかでも多発性骨髄腫に対しては、その効果が臨床試験ですでに証明されています。

しかし、膵臓がんに対するサリドマイドの有効性は、まだ明らかになっていません。これまでに、進行した膵臓がんの患者さんを対象として、サリドマイドを内服した患者さんと内服しない患者さんを比べた無作為化比較試験の成績が報告されています。その試験では、体力の消耗や食欲不振、体重減少などの症状は、サリドマイドを内服した患者さんで、良好な改善効果が示されましたが、延命効果は認められませんでした。現在のところ、サリドマイドの膵臓がんに対する有用性は、世界的にもまだ検討されている段階で、有用といえる科学的根拠は十分に示されていません。

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