手術後受けていたジェムザールの中止が心配

回答者:池田 公史
国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科医師
発行:2005年8月
更新:2013年11月

  

2年ほど前に3期の膵臓がんと診断され、まもなく膵頭十二指腸切除術を受けました。その後、ジェムザール(一般名ゲムシタビン)の注射を受けていますが、先日、ジェムザールを中止すると言われました。腫瘍マーカーのCA19-9は、2カ月前は17でしたが、今は24と、少しずつ上昇してきています。このような状態で抗がん剤治療をやめてもよいのでしょうか。

(愛知県 女性 66歳)

A 術後補助療法としてのジェムザールは標準治療として確立していない

ジェムザールは、現在、進行膵がんに対する第1選択の抗がん剤です。ただし、膵がんの切除後の補助療法としてジェムザールを使用するかどうかは、世界的にも定まった見解はまだありません。しかし、欧州で行われた比較試験では、切除後に化学療法を行うと、行わなかった場合に比べ、生存期間が長くなったという報告があります。

この試験では、抗がん剤として5-FU(一般名フルオロウラシル)とロイコボリン(一般名ロイコボリンカルシウム)を使用しています。その後、5-FUより良好な治療効果を有するジェムザールが登場し、このジェムザールを用いればさらなる生存期間の延長が得られるのではないかと期待されています。

実際、今年のアメリカの臨床腫瘍学会で、ジェムザールが切除後の再発までの期間を遅らせるという報告もされています。

しかし、本当にジェムザールで生存期間の延長が得られるのかは明らかにされておらず、現在も世界中で臨床試験が進行中の段階で、ジェムザールが標準治療として確立したわけではありません。また、ジェムザールの投与期間についても明らかにされていません。

膵がんは、切除後の再発率が非常に高いのも確かです。したがって、予防的にジェムザールを継続されるのも1つの治療戦略であると思われます。

ご相談者のCA19-9の値は、正常範囲内ではありますが、徐々に上昇してきていることはご心配なことと推察します。しかし、現在のところジェムザールを続けるべきかどうか、続けるならいつまでかという質問に対しては、十分なデータがそろっておらず、なかなかお答えしきれません。判断の1つの方法としては、文面にはありませんが、副作用との兼ね合いでお決めになるのもよいかと思います。

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