膵管内乳頭腫瘍。手術しないで治療できないか?
腹部から背中にかけて痛みが出て、病院を受診しました。入院して検査を受けた結果、膵頭部に2センチほどの膵管内乳頭腫瘍があると診断されました。がんの可能性もあると言われ、主治医から手術を勧められています。膵管内乳頭腫瘍とがんの違いは何でしょうか。また、切除しないで治療する方法はないのでしょうか。
(長野県 男性 56歳)
A 悪性の可能性も。腫瘍のタイプによって、治療の選択は異なる
膵管内乳頭腫瘍は、『ぶどうの房』のような形態で、膵管(膵液が流れる管)に生じた粘液を産生する腫瘍です。粘液貯留による膵管の拡張が特徴で、高齢の男性に多く認められます。この膵管内乳頭腫瘍は、主膵管の拡張を主体とした主膵管型と分枝膵管の拡張を主体とした分枝型に分けることができます。
主膵管型とは、膵臓の中心を通っている主膵管に発生した腫瘍で、8割ほどの割合で悪性であると言われます。したがって、主膵管型の場合は切除が一般的な治療方針です。
分枝型とは主膵管から枝分かれした分枝膵管に発生した腫瘍で、悪性の可能性は比較的低いと言われています。しかし、腫瘍の大きさが3センチを超える場合または壁在結節(腫瘍の内部に盛り上がった塊)を認める場合は、悪性である可能性が高く、切除の適応とされています。
この文面からは、ご相談者の膵管内乳頭腫瘍が前記のどのタイプであるかはわかりません。まずは、主膵管型か分枝型か、分枝型である場合は、腫瘍径が3センチを超えているかどうか、壁在結節があるかないかを確認します。
その結果、(1)主膵管型、(2)分枝型で腫瘍の大きさが3センチ以上、(3)分枝型で壁在結節がある、のいずれかに当てはまるときは切除手術を受けられることをおすすめします。また、(1)~(3)に当てはまらない場合は、通常は厳重に定期的に経過観察をして、前記の悪性所見を認めれば切除を検討し、認めなければそのまま経過観察を続けます。
ただし、(1)~(3)に当てはまらない場合でも、悪性のこともありますし、今後、悪性化することもあります。そして、悪性化した場合に、切除困難なほど進行する場合もあります。したがって、根治が期待できるうちに、切除することを考慮されることもあります。
また、残念ながら、膵管内乳頭腫瘍に対する治療法は通常切除手術を行います。切除しないで治す方法はありません。