ステージ4の膵がん。治すことは可能か?

回答者:上野 秀樹
国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科医師
発行:2012年2月
更新:2013年11月

  

先日、おなかの痛みを感じて検査を受けたところ、ステージ4の膵がんと診断されました。治療法としては、ジェムザールという抗がん剤を使った、薬物療法がいいのではないかといわれております。治すことができる治療法は、もうないのでしょうか。

(千葉県 女性 52歳)

A 完全に治すことは難しいが、症状緩和と延命は可能

膵がんに対して有効性が示されている治療には、手術、放射線療法、化学療法などがあります。それらの中で、膵がんを完全に治す可能性のある治療は手術のみです。従って、膵がんが発見された場合、まずは手術でがんを取り除くことができるのかどうかをCTなどの画像検査で検討することになります。

しかし、膵がんは体の深部にできるため早期発見が難しく、切除可能と判断される方は全体の2割に過ぎません。手術ができない最大の理由は、診断時に肝臓や肺などに転移がみつかることであり、これを「転移性膵がん」と呼びます。一方、明らかな転移は見つからなくても、がんが膵臓の周囲の太い血管を巻き込んでしまうと取り除くことは困難になり、これを「局所進行膵がん」と呼びます。

これらの病態に対しては、無理に手術を行っても根治は望めないことがこれまでの経験により明らかになっているため、以下に示すような内科治療が通常行われています。

転移性膵がん(日本膵臓学会分類のステージ4b)と診断された場合は、化学療法が標準治療とされています。膵がんを抗がん剤で完全に治すことは現在の医療では困難なため、化学療法の目標は、できる限りがんを制御し、痛みなどの症状を和らげ、元気で生活できる期間を延ばすことにあります。

膵がんに対してはジェムザールという抗がん剤がこれらの症状緩和や延命に有用であることが証明されており、日常診療で広く使用されています。また、最近は、TS-1という経口の抗がん剤もジェムザールと同等の効果があることが、臨床試験の結果で明らかになったため、治療選択の1つになっています。その他、ジェムザールにタルセバという経口の抗がん剤を併用する治療も始められています。

一方、局所進行膵がん(ステージ4a)に対しては、ジェムザールやTS-1による化学療法の他に、放射線療法も試みられています。放射線を膵がんに照射することによりがんを制御しようという治療であり、放射線の種類としては一般的なX線以外に、重粒子線などを試みている施設もあります。局所進行膵がんに対しては、放射線療法に化学療法を組み合わせた治療(化学放射線療法)が化学療法単独よりも優れているとする報告もありますが、反対の結果も報告されており、明確な結論は出ていません。

以上より、ステージ4の膵がんと診断された場合には、一般的には切除による根治は難しいことから、主治医の先生が提案された化学療法などによって、がんの制御を目指す方針が適切です。病状によりいくつか選択肢があり、また新しい治療開発をめざした臨床試験も活発に行われておりますので、セカンドオピニオンやインターネット(国立がん研究センターがん対策情報センターなど)を利用されるのも良いと思います。

手術ができないと診断された方でも、内科治療が良く効いて、長期間に渡って元気に生活されている方もおりますので、前向きな気持ちで頑張って下さい。

ジェムザール=一般名ゲムシタビン TS-1=一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム
タルセバ=一般名エルロチニブ

同じカテゴリーの最新記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート4月 掲載記事更新!